第五十一話 思春期D
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。あなたが何度も魔法を失敗してしまう理由は、それよ」
プレシアはアリシアと目線を合わせ、ゆっくりと言葉を紡いでいく。娘の手を握り、真実を知ってもらうために。真っ直ぐに向けられる母の目に、アリシアは耐えきれず、思わず俯いてしまった。
「……なんとか、できないの?」
「……リンカーコアについては、まだ究明されていないことがたくさんあるわ。治療法や、改善法も研究されているけど、確立された技術はそこまで多くないの。あなたが求めているものは、確かな技術がまだ作られていないわ」
「でも、でもっ! ちゃんとしていなくても、あるんだよね。なんとかできる方法は、あるんだよね!」
握られていた母の手を、今度はアリシアが強く握り返した。潤んだ真紅に、プレシアとアルヴィンは、アリシアの必死さに一瞬言葉を失った。彼女がこれほどまでに、魔法にこだわっていたとは思っていなかったのだ。危険かもしれない技術に、縋ってしまうほどに。
アリシアの思いに、希望に、2人は口を閉ざす。それでもプレシアは、向き合うことをやめなかった。それが娘にとってどれだけ辛くても、たとえ娘に嫌われてしまったのだとしても、逃げることだけはできない。
―――それが、母親としての役目だから。
「リンカーコアの改善方法は、確かにあるかもしれないわ」
「それじゃあッ…!」
「それでたとえ成功したとしても、あなたの魔力量はEクラス。一般的な魔導師の平均が、Cクラスよ。初級魔法なら問題はないでしょうけど、中級魔法を使いこなすことはできない」
「……ッ」
「いえ、もしリンカーコアの手術に失敗すれば、一生魔法を使うことができなくなるかもしれない。それこそ運が悪ければ、障がいを持ってしまったり、死ぬ可能性だってある。アリシア、あなたには……その覚悟はある?」
初等部3年生の―――8歳の子どもに問いかけるには、あまりにも酷な内容だった。だからプレシアは、アリシアが真実に耐えられる年齢まで待とうと思ったのだ。彼女を壊さないために。
だが、彼女は自分で見つけてしまった。理解できてしまった。プレシアが語る覚悟が、どれほど重いものなのかがわかってしまうぐらいには、アリシアは無知な少女ではなかった。思いが溢れ、零れ落ちた滴が、プレシアの手の甲に落ちた。
「―――なんで」
小さくかすれた声。普段なら聞き逃してしまうだろう声は、今の病室にはよく響いた。
「なんで、なんで…。私、お母さんの娘だよ? すごくかっこよくて、自慢のお母さんの……子どもなんだよ? なのに、どうして私は違うの。なんで私だけ、持っていないの?」
「アリシア…」
「私、そんなんじゃ…なんにもできない、よ。ウィンの、自慢のお姉ちゃんにも、なれないよッ……!」
「アリシア、そんなこ
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