第五十一話 思春期D
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しに込めていく。普段の彼女なら、このような行動はとらなかった。アリシアに初めて魔法を見せてくれた先生から、「使い方を間違えちゃだめだよ」と教えられていたからだ。しかし、彼女は魔法が発動したことに喜び、さらに魔力を注ぎ込んでしまった。
初級の簡易魔法とはいえ、攻撃魔法。不安定な魔力操作によって作られた魔力弾は、徐々にアリシアの制御から外れていった。それに気づいたのは、自身の魔力が切れてしまった瞬間。夢中で魔力を注ぎ込み過ぎたせいで、訪れた結果だった。アリシアが慌てて発動中の魔法をキャンセルしようとしたが、制御できず、そして……魔力弾は暴発という形でアリシアに襲いかかった。
「大丈夫ですよ、アリシアちゃんの怪我は軽傷です。非殺傷設定がちゃんと働いていましたし、地面に魔法が跳ね返った時に、石で腕と頬を切っちゃっただけのようです。ただ魔力ダメージを受けてしまっているので、安静にしてあげてください」
「すいません、ありがとうございます」
アリシアが練習をしていた魔法訓練所から、最も近い民間の病院。病室から出て、頭を下げるプレシアに、アルヴィンから『ちきゅうやのお姉さん』と呼ばれる女性―――イーリスは診断を的確に話していた。魔法訓練所の管理員から連絡を受け、知り合いの子どもだったアリシアを引き受けたのだ。
幸い軽い怪我で、気絶しているだけだったアリシアに、誰もがほっと息を吐いた。そして、次に原因の解明のために話を聞き、プレシアはアリシアが黙って魔法の訓練をしていたことを知った。お互いにしっかり話し合う必要がある。時間の問題だと考えていたことが、起こってしまったのだから。
「叱るべき、なのよね。でも、アリシアを苦しめてしまった私にそんな権利……」
プレシアはギュッと目を閉じ、アルヴィンとアリシアに魔法を教えることを決めた日の決意を思い出す。最初から、アリシアには魔導師となる力がないことを知っていた。それでも、幼かった彼女に真実を告げなかったのは、アリシアの笑顔を奪ってしまうかもしれなかったからだ。
覚悟はしていたのだ。ただ、もう少しアリシアが大きくなったら伝えようと思っていた。それが早まってしまっただけのこと。本来なら隠し事をしていた自分が、アリシアに怒られるべきなのかもしれない。プレシアがそこまで考えて。
「叱ってあげて下さい」
「……あの、イーリスさん?」
「どんな過程があろうと、アリシアちゃんは危ないことをしました。それを叱ってあげるのが、プレシアさんの役目です。他の誰でもない、あなたがしないといけないことなんです。その後に、……いっぱい受け止めてあげたらいいんですよ」
左手の薬指にはまった指輪を愛おしげに撫でながら、イーリスはプレシアと目を合わせる。栗色の切れ長の瞳は、優しげに、でも強く輝
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