第五十一話 思春期D
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『魔法は使えます。ただアリシア様の魔力量はEクラス。それにますたーやマイスターのような「電気」への変換資質はなく、なによりも魔力変換効率が高くありません。言い方は酷いかもしれませんが、僕は魔導師として生きることをおすすめできません』
まだ小さな世界で、アリシアとアルヴィンが共に学んでいた時。コーラルがアルヴィンへ告げた、アリシアの魔力資質。魔力量が少なくても、魔力変換資質がなくても、魔導師にはなれる。だが、彼女には決定的な要素が足りなかった。
リンカーコアから魔力を抽出し、コードを組むことで魔法は発動する。アリシアはその魔力を魔法へと変化させる素養が、一般的な魔導師と比べて低かったのだ。3回に1回は魔法が不発になってしまい、魔力が形になる前に霧散してしまう。それを何度も試すには、彼女の魔力量が足りなかった。
どれだけ努力をしても、どれだけ勉強をしても、アリシアの魔力資質は変わらない。彼女がこの世界に生を受けた瞬間から、決して変わることのない現実。
Sランクの大魔導師として有名な、プレシア・テスタロッサの娘。母の魔力資質を受け継ぎ、レアスキルも持っているアルヴィンの妹。プレシアの使い魔として、高い魔力と技術を持つウィンクルムの姉。
アリシアは、自分の魔力資質に気づき始めた頃から、ずっと考えていた。自分にはいったい、何があるのだろうか。何ができるのだろうか、と。ずっと追いかけていた兄の背中が、どんどん遠ざかっていくことが怖かった。
この時アリシアが、自分の感情を周囲に打ち明けていればよかったのだろう。それこそ自身の兄に、文句を言ったっていい。母親に泣きついたっていい。友人に相談をしてもよかった。だけど、アリシアにはそれができなかった。幼少期から築き上げてきた自分が、それを認められなかったのだ。アリシアは誰よりも、家族に悟られないように動いた。
大切な人たちに、心配だけはかけさせたくなかったから。
「―――アリシアッ!!」
「……ッあ」
だから、ずっと隠し続けていたことがばれてしまった時、アリシアの心は決壊した。
あの時、メリニスと端末で会話をしてから数日後。休日に1人、魔法訓練所に訪れたアリシアは、何度も魔法を発動させた。『フォトンバレット』と呼ばれる、初級の射撃魔法。単発の小さな魔力弾を放つ直射型の魔法は、初等部の生徒にとって最も馴染み深いものだった。
魔導師が初めて習う攻撃魔法が、この魔法なのだ。魔力を外に向け圧縮し、放つだけの魔法であるため、魔力を持っている者ならば、ほぼ使うことができるものだった。アリシアも発動はできるが、やはり何回かは魔力が形にならず、不発になる。それが何よりも悔しかった。
アリシアは今度こそ、と残る魔力を遠慮な
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