第五十一話 思春期D
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シアに言ったこと。ちゃんと向き合って話した時のこと。それらが鮮明に、俺の中で蘇った。
「アリシアと、約束したからな。俺は俺として、俺が持っているものを大切にするって。今回の魔法合戦は正直かなりビビっているけど、チャンスでもあるんだ。俺が築いてきたものを、アリシアに見てほしい。そんな気持ちが……たぶん一番強い」
引きずったりなんかしない。それはアリシアに失礼だし、あの時の自分の言葉を後ろ向きなものにしたくない。だから俺は、前向きに進むと決めたんだ。
俺の心はただ1つ。俺のかっこいいところを妹に見せたい。見栄っ張りかもしれないが、今更である。
「俺はいつも通りだよ。アリシアに「お兄ちゃんすごい!」と言われるために、魔法合戦に勝つ! それが俺の今回の目標だからな!」
「……すげぇ。ここまで不純な動機で戦うやつがいるのか」
「だから心配させてしまって悪かったな、エイカ。ありがとう」
「いや、いい。少しでも心配したかもしれない自分を、今は恥じているから」
俺を死んだ魚のような目で見ながら、語るエイカ。俺の心からの宣誓に、失礼なやつである。そして、この話はどうでもよくなったのか、彼女はあっさり荷物運びを再開してしまった。おい、こら。
エイカの無頓着さは、本当に相変わらずである。めんどくさがりで、あんまり人と深くかかわろうとしない。だけど、どこか甘いのだ。いや、優しいのだろう。励まし方が色々下手なのは確かだろうけど。
少なくとも、俺はエイカに救われた。もしあの時、エイカの不器用な励ましがなかったら、本当に引きずっていたかもしれない。8歳の子どもに気合いを入れられたのは、今でも情けないと思うが。その時のことを思い出して、つい笑ってしまう。
この世界の女の子って強いよなー、と思いながら、俺も搬入の作業に黙々と入った。
******
テスタロッサ兄妹の大喧嘩は、ある意味起こるべくして起こったものだった。そう言われても、仕方がないこと。アルヴィン・テスタロッサというイレギュラーが入ったことで、変わったテスタロッサ家。彼の今までの行動が、彼が変えてしまったものが、巡り巡って引き起こしてしまったことだった。
昔、アルヴィンがまだ魔法を使ったことがないほど、ずっと昔。彼は一度、この問題について危惧したことがあった。問題を先送りにすることしかできなかったこと。真実を告げることができなかったこと。その波は、彼らが初等部3年生になって、ついに姿を現した。
あそこまで事態が悪化したのは、アルヴィンとアリシアのお互いに原因があっただろう。本来なら渦中の中心にいるはずだった彼らの母親が、2人の様子に逆に冷静になってしまったぐらいである。プレシアとしては、責められるべきは自分だと思って
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