開戦
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一夏の尾行を開始してから十数分。階段の踊り場で話しかけてきた女性以外たいした接触はない一夏であったが、正門辺りで彼の友人とみられる少年と合流し、なにやら話し込んでいるようだ。
響はそれを校舎の壁に背を預け、彼等から目を離さずに楯無に連絡を取る。
『はいはいー。調子はどう響ちゃん』
「とりあえずは上々だ。一夏は友達と話してるけどな」
『ふむふむ。それで、何か収獲があったんじゃないの?』
楯無の問いに響は口元をニヤリと歪ませると、頷きながら彼女に報告した。
「一人、妙な女を見た。きっちりスーツ着込んでさも一般人ですよって風を装ってはいたが、明らかに何か隠してるタマだ」
『へぇ……。まぁ響ちゃんがそういうならそうなんだろうね。その人を尾行対象に変える?』
「いや一夏のままでいいだろ。こっちが狙うよりは、一夏を囮に使った方が楽だ。どうせあいつ等の狙いは一夏だろうからな」
『あら、ひどいのね響ちゃん。クラスメイトを囮に使うなんて』
「アイツも男ならそれぐらいは経験しとけばいいんじゃね?」
その言葉に楯無はくつくつと笑っていたが、響は二人が動き出したのを横目で確認した。同時に響は楯無との連絡を断つ。
「さぁて、なるべく早く出てきて欲しいもんだな」
染めたばかりの黒髪を揺らしながら響は雑踏に紛れ一夏の尾行を再開した。
響の尾行に気付かず、友人である五反田弾と話していると一夏だが、ふと弾が一夏に問うた。
「なぁ一夏、IS学園って本当に女の子多いけどよ。少しは色恋沙汰とかねーのかよ」
「ないよ。箒や鈴はただの幼馴染だしな」
「はぁ……その箒って子もそうだが、鈴も大変なこって……」
一夏の花もない話に肩を竦める弾であるが、そこで一夏が「あ」と声を漏らした。
「なんだ? 改めて考えたら気になる子でもいたか!?」
「いや、お前が想像してるような子じゃなくてさ。一人倒したい奴がいるんだ」
「倒したいって……相手は女の子だろ?」
「そうだけどさ、一回その子に思いっきりぶん殴られたんだ」
ぶん殴るという言葉に弾は思わず吹き出してしまった。確かに、女子しかいないIS学園なら殴られることはなく、あるとしてもひっぱたかれるという言葉が妥当だろう。
弾は咽てしまったのか、数回咳をすると一夏に聞いた。
「ぶん殴られたぁ!? おま、一体何したんだよ……」
「いや、なんていうかちょっと色々あってさ」
「色々って……。まぁ深くは聞かねぇけどさ。そんで? その子なんて名前なんだ?」
「鳴雨響だ」
その瞬間、弾の顔が信じられないものを聞いたと言う風に固まった。同時に足も止めてしまい、一夏は怪訝な表
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