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打球は快音響かせて
高校2年
第十五話
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ると、引っ掛けるような腕の振りになりがちらしい。
そして数の多い右打者相手に、しっかり外でストライクをとれないと、初球から厳しいインコースばかりは突いていられない。

「…調子良いですね。GWに一度6点取られてからは、点を取られてませんよ。」
「左の割にコントロールが良いからな。120キロのストレートとカーブだけでも、あれだけ指にかかればBチームくらいは何とかなるだろう。」
「多分、フォームも開くのが遅いですよね。決め手には欠けるけど、ピッチングはできる人ですよねー」

ベンチでは浅海と京子が話していた。
この2人はさながら首脳陣。女同士で、割と深い所まで突っ込んだ野球の話ができているのは、ちょっとお目にかかれない光景だが、これが三龍Bチームの日常だった。一年生の京子に対する「リトル浅海」の評価は、今は現実になっている。

「……僕も、無失点ですよ」

ヘルメットをかぶって、この回の打席の用意をしながら越戸がボソッと言った。
越戸はクリーンアップを打っているが、本職は投手。B戦では、翼に引けをとらないほどの好投を見せている。

「そげんボソボソ喋るような根暗やなかったら、さっさとAチーム上がっとるんちゃけどな!」
「うむ、そして根暗の割には、自負はしっかりあるようだな。それを前面に押し出せれば良いのにな。」
「……」

2人に続け様に言われて、越戸は黙り込んだ。

カキーン!
「よっしゃァー!今日も一本出たァー!」

今日も元気に、枡田の打球音と、それとセットになった叫び声がグランドに響いていた。



ーーーーーーーーーーーーー



「…ふぅん、Bは調子ええんやな。12試合で、負けは二つだけか。誰かええ奴おる?」
「投手が2人と、内野が1人。好村、越戸、枡田は、もうBチームでする事は無いよ。」

野球部専用グランドのバックネット裏、監督室。
選手もマネージャーも締め切った状態で、乙黒と浅海がチーム編成について話し合っていた。コーチである浅海が監督の乙黒にタメ口なのは、2人は同い年だからである。2人とも二十代半ば、若い首脳陣である。

「好村かぁ。ま、左なんはええけど、あの球速じゃイマイチAで使うほどやないの。まぁ枡田と越戸は試す価値あるな。一年やし、まぁ何より俺がとってきた特待やけんな。」
「……」

得意気な顔を見せる乙黒に浅海は呆れた。
好村もお前が家まで行って呼んできた選手だろうが、と目で訴えるが、恐らく乙黒は気づいていない。

「春大はシードも取れたし、鷹合は144キロまで上げてきよる。この夏は旋風起こしたるばい」

鼻息荒く意気込む乙黒。
浅海は「本当にそうなったら良いけどな」と思うほかなかった。




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