壊滅のアマリリス
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そして、ゆっくりと口を開く。
「・・・でも、これでもう、隠しておけなくなっちゃったね」
諦めたような笑み。
言葉を失う全員に目を向ける。
数秒目を伏せ、先ほどまでアルカが腰掛けていた樽に腰掛けた。
「全部話すしかないねー・・・あんまり、話す気にはなれない話なんだけど」
はは、とルーの乾いた笑い声が小さく響く。
「・・・聞いて、くれる?」
今にも消えてしまいそうな、弱々しい声。
考える時間は必要なく、全員が頷いた。
それを確認したルーは口を開く。
「あれは・・・10年前の、僕の誕生日の前日の事だった」
10年前。
ルーの故郷、アマリリス村は血塗れの欲望によって壊滅に追い込まれていた。
「ルー、走って!振り返っちゃダメ!」
「気を抜くなっ!安全な所まで走るぞ!」
「う、うんっ!」
当時8歳、この次の日に9歳になるルーは父親の『エリアルド・シュトラスキー』と母親の『ヴァニラ・シュトラスキー』に手を引かれ、走っていた。
その背後で爆発音が響き渡る。
「うあっ!」
「大丈夫か、ルー!足場が悪いな・・・」
崩れた建物の残骸に足をとられてルーが転ぶ。
ルーを起こしながらエリアルドは表情を歪めた。
「!」
「父さん?」
すると、エリアルドは後ろに目を向け、ハッとしたように目を見開いた。
そんな父親の様子に不思議なものを感じたルーは首を傾げる。
エリアルドはゆっくりとルーに目を向けた。
「ルー、お前は母さんといっしょに逃げろ」
「え?父さんは!?」
「オレはここで戦う・・・これ以上好きなようにはさせない」
「で、でもっ!」
心配そうに声を上げるルーの頭に手を乗せ、くしゃっとエメラルドグリーンの髪を撫でる。
優しい笑みを浮かべ、エリアルドはルーを見つめた。
「大丈夫だ、父さんだって魔導士だぞ?」
「・・・うん」
「絶対勝つ。約束する。だから、母さんを守るって約束だ」
「・・・そうだよね!父さんは強いんだもんね!」
エリアルドの言葉は力強く、ルーの表情も明るさを取り戻す。
2人は小指を絡め、小さく上下に揺らした。
「約束な」
「約束だよ」
ふわり、と。
絡めた指が解ける。
エリアルドは腰に装備した銃を手に取り、ルーの手に握らせた。
「父さんの銃だ。もしもの事があったら使うんだ・・・いいか、もしもの時だけだぞ」
「うん・・・でも、そしたら父さんの銃は?」
「オレはもう1丁持ってるから大丈夫だ」
そう言われたルーはエリアルドの腰に目を向ける。
確かにそこにはもう1丁、銃があった。
それに安心したルーは銃を受け取り、胸に抱く。
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