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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
序章 シャングリ・ラの少年
16.July・Night:『The Dark Brotherhoods』
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ている。ただし常連の一握り、マスターのお眼鏡に適った人物のみだが。
 『代金さえ頂ければ、避妊具からABC兵器まで何でもご用意しますよ』との謳い文句通り、どうやってかは全くもって分からないが、注文の品は必ず手に入る。

――一度、真剣に調べようとしたけど……教えてない筈の俺んちのポストに、いつの間に撮られたか分からない尾行写真と『オイタが過ぎますよ』とだけ書かれた便箋が入っていて諦めた。

「これです」
「へぇ……随分と古い本ですね」

 珈琲と共に差し出されたのは、題名すら読めない……というより、何語かすらも分からない本。
 辛うじて、それが羊皮紙で出来ている事が理解出来た程度である。

「ラテン語です。記されたのは中世、錬金術に関するものだそうです」
「錬金術、ですか……でも俺、魔術はルーンを多少かじってる程度ですよ?」

 因みに、マスターは嚆矢が『魔術使い』である事は知っている。嚆矢としては、いつの間にバレたか不明で戦々恐々なのだが。

「だからこそ、ですよ。君のルーンと錬金術の相性は良いのです。錬成と刻名、それは切っても切れぬものなのですから」

 成る程、一理ある。『錬金術』は物を作り出す魔術、『ルーン』は刻む事で効果を発揮する魔術だ。
 それは、彼の『親』から学んだ。アイルランド生まれで、今は滅んだ『ケルト魔術』を操る『樹術師(ドルイド)』の末裔である義母と……九州地方の、()る金属鍛冶の家系を継ぐ義父の相性の良さから。

 果たして義父が知っているかは疑問だが、義母は義父の作に良くルーンを刻ませている。端から見ればただの模様だが、用途に応じた様々な加護のルーンを。
 お陰で、学園都市の主要な料理店の板前やレストランのコック御用達の高級調理品職人として通の間では有名である。

「ご存じですか、コウジくん。『魔術師』と『魔術使い』の違いを」
「ええと……『一品物を使う』のが前者、俺みたいに『既製品を使う』のが後者……でしたっけ?」

 そう、教えられた通りに答えれば――焔の瞳を細めて魔導師が笑う。

ThatVs right.(よくできました その通りですよ)。故に、君が真に魔導を志すならば――――知識は、幅広く有った方が良いと言う訳です。」
「……成る程」

 同じ男ですら惹き付けられそうな、その妖しさ。もしも女ならイチコロであろう。

「さて、良く出来た御褒美です。その書は差し上げましょう」

――あーあ、俺もあれくらいイケメンだったらなぁ……風紀委員の娘達も、さっきの娘だって、あっちの方から番号とか教えてくれたんだろうなぁ……

 等と、ついつい無い物ねだりで腐ってしまった。それを、見咎められる。

「どうしましたか、急に上の空になりましたが?」

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