第六十一話 日本シリーズその四
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「だからね」
「ああなったのね」
「何でもそうだけれど慢心は怖いわよ」
何よりもだというのだ。
「巨人を見てもわかる様にね」
「じゃあ阪神も慢心したら」
「巨人になるわよ」
第二のだというのだ、戦後日本の病理を全て表したが如き存在に。
「そうなるから」
「それだけはなのね」
「相手も強いのよ」
他のチームもだというのだ。
「ロッテにしてもね」
「勝てるにしても」
「そう、油断出来る相手じゃないわ」
それは無理だというのだ。
「巨人は相手を舐めてかかるからね」
これはファンもだ。強い巨人を盲信しそして巨人に敗北は有り得ないと考える。これで百戦百勝の鋼鉄の霊将を崇め奉る独裁国家と何が変わるのか。戦後日本はある面においてテロ支援国家と同じレベルであろうか。
「ああなったのよ」
「そうならない為にもね」
「油断大敵よ」
これに尽きた。
「野球でも何でもね」
「バンドでもですね」
ここでこの言葉が出た。
「それも」
「その通り、慢心して油断すればね」
「駄目になるんですね」
「何でもそうよ」
この世のあらゆることがだ、慢心してしまえばだというのだ。
「慢心すれば終わりよ」
「私達もですね」
「巨人になるんですね」
「私なんかね、あれよ」
ここで部長が言って来た、その小柄な身体を思い切り突き出す様にして。
「お兄ちゃんもお父さんも背が高いからね、私もそうなるって思ってたら」
「部長さんはですか」
「そのままだったんですか」
「そうよ、こうなったのよ」
こう言うのだった、小柄な身体で。
「自然に大きくなるって思ったらね」
「違ったんですか」
「そのままだったんですか」
「私の大きさは母方のお祖母ちゃんそのままだったのよ」
「じゃあ先輩はですか」
「その母方のお祖母さん似なんですね」
「そうなの、お祖母ちゃん小さくてついでに言えば顔も私そっくりで」
遺伝である、紛うかたなく。
「その遺伝の存在を知らなくて皆長身の家系だって思ってて第二次成長期に油断していたら」
「身長一五〇ですか」
「そうなったんですね」
「いやあ、油断したわ」
笑いながらの言葉だった、そこには余裕すらある。
しかしだ、それでもその油断のことまで話すのだった。
「この通りになったわ」
「じゃあ部長さんもですか」
「油断されてたんですか」
「小さな油断、大きな後悔よ」
こうも言う部長だった。
「このこと、忘れないでね」
「けれど部長さん確か」
「そうよね」
ここでだ、一年生達は部長のいつもの言葉を思い出した。その言葉は一体どういったものかというと。
「小柄なのがかチャームポイントだって」
「そう仰ってるじゃないですか」
「いやいや、後になって気付いたの
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