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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第58話 「舞台に上る者、退場する者」
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く燃え上がる高温の炎と化したかのようだ。
 だが視線は冷たい。冷たく凍りつき、冷たすぎて触れれば熱く感じてしまうほど、冷たい目。
 宰相府に戻られた皇太子殿下は軍務省に通信をつなぎ、帝国軍三長官を呼び出された。画面に現れた三長官、元帥達は皇太子殿下を前にして、緊張の極みだ。
 まるで新兵のように、がちがちに強張っている。

「勅命である」

 ぽつり皇太子殿下が言われた。
 ――勅命。
 部屋の中にいる者、画面の向こうにいるもの達。それら全てが息を飲む。
 皇帝陛下亡き後、皇太子殿下には勅命を下す権力がある。
 次に皇太子殿下が何を言いだすのかと、固唾を飲んで見つめた。

「帝国軍宇宙艦隊のみならず、地上部隊、憲兵、警察、内務省、それら全てを使い、地球教徒を検挙せよ。全ての支部、集会所を強制捜査せよ。宇宙艦隊は地球へ向かい。総本部とやらを壊滅して来いっ!!」

 なんなら地球そのものを破壊しても良い。
 そう言われた皇太子殿下のお姿に、ルドルフ大帝が重なって見えた。
 一時的な怒りだろう。だが、まだ、皇太子殿下の理性は働いている。これほど怖い事を言いつつも、このお方は唯の一度も、殺せとは命じていない。大逆罪を適応してはいない。

「以上だ」
「ぎょ、御意」

 元帥達の声が震えている。
 皇太子殿下の勅命を噛み締めている。内容を把握しようとしていた。
 そして気づいた。
 勅命は、捕まえろ。調べろ。本部を壊滅して来い。
 まだ大丈夫だ。
 このお方はルドルフ大帝にはならぬ。
 通信を終えた皇太子殿下が私の方に振り返り、葬儀の準備だ、と苦い口調で言った。
 フリードリヒ四世陛下とアレクシアの葬儀。
 帝国を挙げての国葬となろう。そして皇太子殿下は第三七代銀河帝国皇帝となられる。

「――殿下」

 アンネローゼがおずおずと声を掛けてくる。
 手元の画面にはラインハルトが映っていた。ラインハルトの顔色が悪い。
 ……まさか!!
 帝国で地球教徒によるテロがあったのだ。同盟でも同様であって不思議ではない。

「どうした?」
「ブラウンシュヴァイク公爵とサンフォード議長がテロによって死亡しました」
「そうか、こちらも馬鹿親父とアレクシアが死んだ」

 画面の向こうでラインハルトが息を飲む。

「それは……」
「急いで戻って来い。協議は一時中止だ。同盟側にはフェザーンを通じて説明させる」
「はい」

 短く返事を返すラインハルト。
 顔を上げ、真っ直ぐ見返すその目は、これまで皇太子殿下に振り回され、ぶちぶち文句を言っていた少年のものではなかった。
 皇太子殿下に比肩するほどの覇気を感じる。
 こやつの中にあった何かが、はっきりと目覚めた。
 通信を終えられた皇太子
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