第58話 「舞台に上る者、退場する者」
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ルウィン殿下を小脇に抱え込んだ。なんという持ち方を……。
きゃっきゃと笑うエルウィン殿下。満面の笑みを浮かべている。マクシミリアン殿下も同じようにして欲しがったが、ベーネミュンデ侯爵夫人はメッというように、人差し指を立ててみせた。
アレクシアさんは一足先に、陛下の下に向かっていきました。どうやら皆のために飲み物を用意なさるつもりなのだろう。よく気のつくお方です。
「なにをっ!!」
突然、アレクシアさんの悲鳴のような鋭い声が響きました。
わたしの所からはアレクシアさんの影になって良く見えません。どうやら女官の一人がスカートの中から何かを取り出そうとしているようでした。
「やめなさいっ!!」
アレクシアさんの声。陛下が不審に思い、近づいていった瞬間。
爆裂音が響き渡りました……。
爆音と共に降り注ぐ赤いもの。わたしの頬に飛び散った飛沫を指で拭う。指先についているのは、小さな肉片だった。
慌てて周囲を見回しても、アレクシアさんの姿が見えない。陛下は倒れ伏している。
「アレクシア! 親父!」
宰相閣下が走ってきました。わたしにエルウィン殿下を押し付けると、血の跡を見つめながらも陛下を抱き起こします。
いったい何が起きた? 人を原型が留めないほど消し飛ばす爆薬。そんなものをどこで? いえ、そうではない。そんなものを抱えて自爆できるものなのでしょうか?
ああ、わたしはいったい何を考えている。
そんな事を考えている場合じゃない。ダメだ。頭が働かない。なんだろうこの感覚は。霞が掛かっているように、現実感がない。
まさか、本当に、アレクシアさんが死んだ……?
宰相閣下が医師を呼んでいる。何かを叫んでいる。何を言っているのだろう。よく聞き取れない。
「しっかりしなさいっ!」
頬を張られた。
目の前にベーネミュンデ侯爵夫人が立っていた。
目の焦点があう。耳は閉ざせないのに、何も聞こえなかった耳に音が飛び込んできた。
「被害を報告せよ。何人死んだっ。ノイエ・サンスーシ内の全女官の身元を確認させろ」
爆裂音に急いでやってきた近衛兵たちに向かい、矢継ぎ早に指示を飛ばす宰相閣下。顔が青ざめつつも、口調はしっかりしている。冷静だ。
エルウィン殿下が泣いている。ぎゅっと抱きしめると、小さな手がわたしの服を掴む。
■宰相府 リヒテンラーデ候クラウス■
ノイエ・サンスーシ内で地球教徒によるテロが起きた。
陛下とアレクシア、そして数名の女官が亡くなった。しかし不幸中の幸いとでも言うべきか、皇太子殿下とエルウィン・ヨーゼフ殿下、マクシミリアン殿下はご無事であった。
無言のまま宰相府の廊下を歩く皇太子殿下のお姿は、込み上げる怒りを抑えようとし、かえって青
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