第58話 「舞台に上る者、退場する者」
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「色彩で言えば、カラフルである事を望んでいるんです。民主主義一色も専制主義一色も好ましくない。あの皇太子らしいといえば、らしい考えです」
「なるほどな〜」
なんとなく言いたい事は分かる。
色んな思想があって良い。それは政治体制にも言えることだと、そう考えているのか。思想に関しては同意する者は多いだろうが、政治となればどうしても単一で無いとダメだ、という意見が主流となりがちだ。
どちらかというと押しの強いフォーク大佐と意固地な部分のある口の重いヤン。正反対ではあるが、そこに陽気なアッテンボローと真面目なラップが加わる事でうまくいっている。
考えてみれば、おもしろい組み合わせだ。
「ちょ、ちょっと待ってください。今回のテロが地球教の画策した事なら、あの皇太子も狙われている?」
アッテンボローが慌てたように言い出した。
「まずいぞ」
「そりゃまずい」
ラップも同じように考え込んだ。
地球教にとって厄介なのは、同盟ではなく帝国だ。
その中でも一番厄介で目障りなのは、あの皇太子。ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウムだ。
あいつさえいなければ、そう考えてもおかしくない。
「しかしあの皇太子がテロに倒れるなんて事になったら」
「帝国の後継者問題が浮上してくる。今は皇太子の下で一つに纏まっているが、次の後継者が皇太子ほど英明でも開明的でもない限り、武力による統一を目指すだろう」
「国力を増した帝国が戦争を仕掛けてくる」
勝てるのかという思いが体を震わせた。
■ノイエ・サンスーシ ジークフリード・キルヒアイス■
目の前で宰相閣下とエルウィン・ヨーゼフ殿下が戯れていた。マクシミリアン殿下も一緒になり、宰相閣下に馬乗りになって、ぽかぽか叩いているところなんか、微笑ましいと同時にざまーという思いが湧き起こってくる。
いけない。
わたしもずいぶん性格が悪くなってしまったようだ。
その様子をこれまた皇帝陛下がにまにましつつ見ていらっしゃる。
ざまーみろと思っておられるのが、丸分かりだ。ベーネミュンデ侯爵夫人がそんな陛下のご様子を、呆れたような眼差しで見つめていた。
アレクシアさんは日傘の下で微笑んでいる。視線の先には宰相閣下とエルウィン・ヨーゼフ殿下。暖かい日差しの下、柔らかな芝生の上で楽しそうに戯れる。
ふと、まだまだ小さかった頃、父や母と一緒に遊んだ事を思い出してしまった。
思えば遠くまで来てしまったような気がする。小さいときはノイエ・サンスーシに立ち入るなんて、思いもしなかった。
「ふむ。少し休憩するかのう」
陛下の言葉に、背後で控えていた女官達が近づいてきた。
ベーネミュンデ侯爵夫人はマクシミリアン殿下を抱き上げ、宰相閣下がエ
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