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緋弾のアリアGS  Genius Scientist
イ・ウー編
武偵殺し
19弾 雨と涙と
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は透明でも厚く固い。もちろん少しも歪まず、アリアを受け付けない。

 かなえさんはアリアを心配そうな目で見ながら、2人がかりで引きずられるようにして運ばれていき……最後の最後で、俺の方を見て言った。

「ミズキさん。その子を……アリアを頼みます。意地っ張りで素直じゃないところもあるけど、根はとても優しい子だから。どうか、よろしくお願いします」

 かなえさんは最後にまた、あの優しい笑みを浮かべて。

 面会室の奥の扉が――――クリーム色の柔らかさとは裏腹に重い金属音を響かせて――――

 閉ざされる。



「訴えてやる。あんな扱い、していいわけがない。絶対……訴えてやるッ!」

 と、独り言をこぼしながら、曇り空の下を歩いて新宿駅へ戻るアリアに……

 俺はずっと、声をかけられずにいた。

 ただ影法師のように、その後ろについていく。

「……」

 かつん、かつん、かつん。

 ミュールを鳴らしてアルタ前まで戻ってきたアリアは、急に――――

 かつ……ん。立ち止まった。

 俺も、止まる。

 背後から見れば、アリアは顔を伏せ、肩を怒らせ、ぴんと伸ばした手を震えるほどきつく握りしめていた。

 ぽた。

 ぽた……ぽた。

 その足元に、何粒かの水滴が落ちてはじけている。

 それは、聞くまでもなく、アリアの涙だった。

「アリア……」

「泣いてなんかない」

 怒ったように言うアリアは、顔を伏せたまま震えていた。

 湿っぽい風の中、街を歩く人々は道の真ん中で立ち止まる俺たちをニヤニヤ見ている。

 痴話喧嘩か何かだと思っているのだろう。

「おい……アリア」

 俺はアリアの前に回り込み、少し背をかがめて顔を覗き込んだ。

 ぽろ……ぽろ。ぽろ。

 前髪に隠れた目から、うつむいた白い頬を伝って、真珠みたいな雫が滴る。

「な……泣いてなんか……泣いてなんか……」

 そう言うアリアは歯を食いしばり、きつく閉じた目から涙を溢れさせ続けていた。

 そして、

「ない……だからぁ……わぁ……うぁあああぁぁあああぁぁ!」

 糸が切れたかのように、泣きはじめる。

 俺から顔を逸らすように上を向き、ただ、子供のように泣く。

 こっちの胸が振動してしまいそうなほど、大きな声で。

 痛々しいほどに、悲しそうに。

「うあぁあああああああ……ママぁー……ママぁああああぁぁ……!」

 夕暮れの街は、明るいネオンサインに楽しい音楽を乗せて、流行の服や最新の電化製品を宣伝している。チカチカするその光が、アリアの緋色の髪を弄ぶように照らす。

 追い打ちをかけるように、通り雨が降りはじめた。

 
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