三十一 黄昏
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にならねえのと同じようにな」
再不斬の言葉に曖昧な頷きを返しつつも、ナルトは小さく「それでも、」と呟いた。格子窓に目を遣る。痛いくらい眩しい黄昏の光が彼の身を包み込んだ。
「それでも。彼女の…ナルの口から直接、訊きたかったんだ」
軽く目を閉じたナルトが、ややあって顔を上げる。その面差しには、落ち込んでいた様子など微塵も残っていない。
おもむろに取り出した地図と巻物を再不斬に投げて寄越す。受け取ったそれらをちらりと目の端で捉え、再不斬は視線で話を促した。
「ほとぼりが冷めるまで暫く此処に滞在してくれ」
「…例の野暮用か。ジャングルの奥地たぁ、なかなか辺鄙な場所を選んだな」
地図に視線を落とす。ナルトの十日間を粗方理解して、再不斬の唇が微かな笑みを形作った。元々はどこかの忍びが使っていた物なのだろう。「ねこばばしたみたいで正直気乗りしないが…」というナルトの言葉に彼は「ハッ」と鼻で笑った。
「主のいない城なんざ何の意味もねえ。文句言われる筋合いはねえよ」
「いいや。苦情を訴える者はいる。だからその巻物を用意したんだ」
静かに巻物を指差すナルトを、再不斬は怪訝そうに見遣った。指の先を追って巻物を広げる。
「砦周囲に【狐狸心中の術】を幾重にも掛けておいた。残党達が辿り着けないようにね。そいつがなければ決して目的地には着かない」
ナルトの話を聞きながら、興味津々とばかりにドスとキンは身を乗り出した。再不斬の手元を覗き込む。巻物の中には、【狐狸心中の術】を解く術式が施されていた。
特定の区域に入ると、迷路に迷い込んだかの如く同じ場所を永遠に歩かせる【狐狸心中の術】。砦を出る寸前、香燐との散歩中にナルトが秘かに掛けておいたものである。
先ほどとは一転して、すっかり気を良くした再不斬は地図と巻物をすいっと懐に納めた。
「三忍とは言え、修行不足なのがよく解ったからな。この分じゃ、とてもアイツと渡り合えねえ…」
暫く身を潜める事を承諾する。最後のほうは掻き消えるくらいの声量だったが、その言葉尻をナルトは捉えた。ちらりと再不斬を見遣る。ぐっと握り締められた拳が再不斬の決意のあらわれを示していた。
「ドス達も連れて行ってくれ。白も畑カカシと面識があるから危ないだろうし」
大蛇丸の事を考えた上でのナルトの発言に、ドスとキンは異を唱えなかった。反して不満げな様子を隠しもせず白は顔を歪める。対照的に名を呼ばれなかった香燐は心が浮足立つのを抑えられなかった。思わず口元が緩む。
「それで?」
不意に再不斬はくいっと口角を吊り上げた。どこか面白がっている口調で訊ねる。
「お前、わざと残党を残したろう?」
「…なんのことかな?」
再不斬の言いたい事を正確に理解しながらも、ナルトは答えをはぐらかした。
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