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渦巻く滄海 紅き空 【上】
三十一 黄昏
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とって、不機嫌な再不斬に口応えするのは至難の業であった。先を越され、内心気落ちする彼女をよそに、白は言葉を続ける。
「けれど、一体何者だったんですかね?再不斬さんの首切り包丁を狙っていたみたいでしたけど」
「知るか」
そっぽを向いたまま、言い捨てる。表情を険しくさせる再不斬を恐々と窺いながら、部屋の隅で大人しくしていたドスとキンは先ほどの出来事を思い返していた。



水月と名乗った少年はあれからすぐ再不斬に勝負を挑んだのだ。
何時自来也が戻ってくるかわからぬ状況下。再不斬がその勝負を受けるはずもない。しかしながら執拗に挑んでくる水月に、いい加減うんざりした彼は【水牢の術】の印を結んだ。捕らえて、なぜ首切り包丁を狙うのか尋問するためである。また、通り雨のおかげで、水溜りが至る所に出来ていた。水の術には困らない。

水の円球に閉じ込められた者は内側から破る事が出来ない。脱出不可能の牢獄【水牢】に、再不斬は確かに、水月を幽閉した。

はず、だった。

だが【水牢】の中には誰もいなかったのだ。あるのは牢一杯の水ばかりで、囚人の姿形も見当たらない。戸惑い、術を解く。けれどやはり視界に映るのは、地面に溜まった水ばかり。
「逃げ足の速い野郎だ」
苦々しい顔つきでそう呻いた再不斬の一言に、ドスとキンはその時大いに同意した。探し出してやりたいところだが、自来也の事を考えると、無駄な時間を過ごすのは得策ではない。
結局水月を見つけ出す事も出来ぬまま、再不斬達はその場を後にしたのであった。




回想に耽っていたドスとキンは、ふとナルトに目を向けた。
宿の格子窓から射し込んでくる、朱を帯びた紫紺の光。赤紫に色づく室内にて、彼らは一瞬ギクリと身を強張らせる。ナルトの双眸が、窓の外に広がっている空と同じ色合いをしているように見えたのだ。波風ナルの瞳が澄み切った真っ青な空ならば、今のナルトの眼はどこかもの哀しい夕焼け空を思わせる。

ドスとキンに見られている事など知らず、ナルトは再不斬に視線を投げた。その眼は青い。変わらぬその青に、気のせいだったかとドスとキンは自らを納得させた。
暫しの沈黙の後、ナルトはようやく口を開いた。


「此処―――木ノ葉が、彼女の居場所なんだ」
波風ナルの事を言っているのだろう。ナルトの答えに、だろうな、と腹の内で再不斬は呟いた。


一度波の国で対峙した相手だからこそわかる。あの波風ナルという少女は、ただただ真っ直ぐな人間だ。再不斬は勿論ナルト含め、忍び世界の闇を知る者にとっては眩しいほどの。


伏し目がちで佇む。どこか哀愁を漂わせるナルトに、些か慰めを含んだ声音で「分かり切っていた事だろうが」と再不斬は声を掛けた。
「所詮表は表でしかあり得ない。コインの裏が何時まで経っても表
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