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少年と女神の物語
第五十八話
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ロポチトリから簒奪した権能もあるんだし」

 俺がそう言うことが分かっていたのか、ママの返答は早かった。

「確かにそうだけど、その権能には弱点もあるのよ?今のところムソーは出会ってないけど、闇や夜に化身する神様に出会ったらどうしようもないし。何より、その権能の元の神様だって、天敵なのよ?」
「分かってるよ、それは。むしろ、俺がその隙をついてウィツィロポチトリを殺したんだし」

 不死身の属性を持つ神は、異常なほどに面倒。なんせ、死なないんだから。
 その分、その力が手に入ると異常なほどに心強いんだけど。

「分かってるならいいわ。その自覚が無くて、死んじゃった子もいたから」
「大丈夫だよ、俺は死なない。神代が守るのは、自らをも含めた神代だ」

 そして、俺の意識は戻った。



◇◆◇◆◇



「ちょっと、早く起きなさいバカ兄貴!起きなさい!起きてってば!お願いだから、起きてよ・・・お兄ちゃん・・・」

 俺が意識を取り戻すと、俺を揺すりながら泣いている氷柱の顔が目の前にあった。
 梅先輩のときを思い出すな・・・手に血は、ついてないな。

「・・・大丈夫だから、な。泣くなよ」
「あ・・・」

 俺が手を動かして氷柱の頭を撫でると、氷柱はようやく俺を揺するのをやめた。
 いや、気持ちは分かるんだけどな・・・結構痛いんだよ。

「・・・大丈夫、なの?」
「ああ、問題ない。俺が死なないの、知ってるだろ?」
「そうじゃなくて!」
「大丈夫だよ」

 俺はそう言いながら立ち上がる。
 やべぇ、すっごく痛い。前のスクナビコナのときみたいに穴だらけのほうがよかったな・・・。
 動くたんびに来る肋骨の刺さる感覚が、泣けないほどに痛いな。

「その傷で大丈夫なわけ、」
「いや、意外と大丈夫だ。・・・この感じなら上に羽織れば見た目で怪しまれはしないだろ。・・・あ、でも血を吐いたときについた血だけは拭っとかないと・・・」

 俺はそう言いながら、神酒で濡らした布で口元を拭う。
 そのまま召喚した上着を羽織って体形を隠し、肋骨の辺りがおかしくなっているのをごまかす。

「ほら、これで問題ないだろ?」
「・・・・・・」

 氷柱の反応はなし。
 ・・・怒らせたか?

「えっと・・・氷柱?」
「・・・その傷で歩く気?」
「ああ、俺のほうに霊薬はないしな。氷柱もだろ?」

 氷柱は、首を横に振った。

「じゃあ、仕方ないだろ。家に帰って、治癒の霊薬を使うしかない。そこまでは歩いて帰るしかないから、こうするしかないだろ?」
「・・・違う、他にも手段があるじゃない」

 氷柱が言いたいことは、すぐに分かった。
 でも・・・

「私が、それをすれば、」
「ダメ
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