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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十三話 暗部
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通りだ……」
知りたくはなかった。そして誰にも知られたくはない。だからヘルクスハイマー伯は死んだ。死なねばならなかった。
「済まぬな、侯。侯にばかり嫌な仕事を押し付けてしまったようだ」
「気にすることは無い、公が同じ立場になれば同じ事をしたであろう。それだけの事だ」
「……」
スクリーンが灰色に鈍く光っている。その姿さえ疎ましく思えた。
「ヴァレンシュタインはこの件を知っているようだ。ヘルクスハイマー伯の一族は皆死んだと思っていたが……」
「生き残りが居たのだろう。そこから漏れたのだと思う」
リッテンハイム侯は憂鬱そうな表情をしていた。おそらくはわしもだろう。守ってきた秘密が一番知られたくない相手に知られた。
「已むを得ぬな。侯、劣悪遺伝子排除法を廃法にしよう」
「そうだな、そうするか」
「幸い反対するであろう貴族達は没落した。政治的な問題は無いはずだ」
政治的な問題は無い、だがリッテンハイム侯の顔色は優れなかった。多分夫人とサビーネにどう話すか、或いは無言を貫くかを考えているのだろう。わしも同じだ、頭が痛い。
門閥貴族が滅び劣悪遺伝子排除法が廃法になる。ルドルフ・フォン・ゴールデンバウム体制の終焉だな。ついにその時が来た……。五百年も続いたとみるべきか五百年しか続かなかったとみるべきか。人の一生を思えば長いのだろうが国家の盛衰を思えば大した事では無かろう。五百年以上続いた国家はざらに有る。その幕引きを女帝夫君であるわしが行うことになろうとは一年前には考えもしなかった事だな……。
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