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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十三話 暗部
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ァレンシュタイン総司令官代理がじっと俺を見た。
『准将、後は頼みますよ』
「分かっております。こちらも準備を整えます」
総司令官代理が幾分目を細めて頷いた。獲物を視界に入れた時の肉食獣の目だ。シェーンコップ准将が見たら喜びそうだなと思った。
帝国暦 487年 1月 8日 オーディン 新無憂宮 オットー・フォン・ブラウンシュバイク
「劣悪遺伝子排除法を廃法にしろと言うのか」
『はい。既にトリューニヒト議長にも話は伝わっています。議長もそれが出来るなら望ましいと。あの法は同盟でも評判が芳しくありません』
リッテンハイム侯が驚いている。侯がわしに視線を向けてきた。侯が何を考えているのか分かる。どう答えれば良いのか……。曖昧な表情をするしかなかった。
『バグダッシュ准将によればヴァレンシュタインは劣悪遺伝子排除法は既に有名無実化されている。廃法にしても問題は無い筈だと言ったとか』
レムシャイド伯の言葉にリッテンハイム侯が“確かにそうだが……”と語尾を濁した。確かにそうだ、だがルドルフ大帝が創った法であり遺伝子と血統を重視する帝国の基盤となった法でもある。ある意味帝国の国是の否定とも言えるだろう。リッテンハイム侯の歯切れが悪くなりわしが無口になるのも当然と言える。
スクリーンから咳払いが聞こえた。レムシャイド伯が言い辛そうな表情をしている。
『御二方もお困りなのではないかとバグダッシュ准将が言っていました』
「どういう事かな、それは」
わしが問い掛けるとレムシャイド伯は視線を伏せた。
『御二方とも御息女が御一人しかおられません。皇族が少なくなっている。その辺りの事を言っているようです』
リッテンハイム侯が嫌そうな表情をした。おそらくはわしも同様だろう。ヴァレンシュタインはバグダッシュ准将を通してゴールデンバウムの血が弱まっていると指摘している。レムシャイド伯は遠回しに言っているが本人はバグダッシュからもっと露骨に言われたのだろう。言い辛そうにしている。
「つまり廃法にしたほうが我らのためになるという事か。我らには劣悪遺伝子排除法を維持するだけの資格は無いと」
わしの言葉にリッテンハイム侯は憮然としている。面白くなさそうだ。レムシャイド伯が慌てた。
『そのような事は……、そう言えばバグダッシュ准将が妙な事を言っておりました』
「……」
『ヘルクスハイマーの一件もあると。どういう事なのか質しましたが准将も知らない様です。ヴァレンシュタインに伝えるようにと言われた様ですな』
ヘルクスハイマー? 確かに妙な事を言うな、ヘルクスハイマー伯の事か? 何だ? リッテンハイム侯が顔を引き攣らせている。
「侯?」
「ああ、なんでもない。……今すぐ返事をすることは出来まい。廃法にするの
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