第百五十八話 義昭の愚痴その五
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「あの寺の堅固さな」
「そこまで、ですな」
「はい、そうです」
だからこそだと述べる高田だった。
「ですからここは」
「織田家に攻め落とされるのではなく」
「残ってもらいますか」
「織田家は既に疲れが見えます」
高田はもうこのことも見抜いていた。
「摂津、河内、和泉、紀伊と戦えば」
「もう石山を陥とすまでの力はない」
「疲れの為に」
「人は疲れます、武具も使えば傷みます」
このことからは逃れられない、この世にある限り。
「ですからこのまま疲れさせれば」
「織田家の大軍と名将達を以てしても石山は陥とせない」
「そうですな」
「だからこそ疲れさせてですか」
「石山御坊だけでも残させますか」
「そうれば次につなげられます」
今は彼等にとって思わしくない状況だ、だがそれでもだというのだ。
「ですから」
「わかりました、それでは」
「今は」
「はい、長老にもお話しましょう」
高田は整っているが陰惨で不気味な表情を浮かべている顔で二人に述べた。
「ここは」
「ですな、すぐに」
「そうしましょうぞ」
天海と崇伝も応える、そしてだった。
彼等は話を終えその姿を消した。茶室の中でまるで煙の様に消えて後には何も残らなかった。そして闇の中では。
中央の老人の声がだ、周りの声に頷いてこう言った。
「よい、ではな」
「ここはですな」
「織田家を疲れさせますか」
「そして石山だけでも残す」
「そうしますか」
「うむ、そうする」
老人の声は周りの声に頷く感じで答えた。
「ここはな」
「では摂津等で、ですな」
「今度は」
「そうじゃ、仕掛けるとしよう」
老人の声は再び周りの声に答えた。
「雑賀衆や門徒達に混ざってな」
「では雑賀孫市にですな」
「加勢しますか」
ここで一人の忍、それもかなり特異な者の名前が出た。
「あの鉄砲と馬を使うことに巧みな忍に」
「そして雑賀衆の中に」
「そうするとしよう」
まさに彼等の中に混ざってだというのだ。
「ここはな」
「では、ですな」
「我等の軍勢を入れて」
「そうしてですな」
「織田家を徹底的に疲れさせますか」
「石山を陥せぬまでに」
「やがて将軍も動く」１０２
老人の声はそのことも、見抜いている感じだった。
「織田家と本願寺の戦の仲裁にな」
「そして仲裁を受けてですな」
「この度の戦は終わりですな」
「本願寺は頭だけでも生き残る」
「そうなりますか」
「石山は織田家の全軍でようやく陥ちるかどうかだ」
そこまで堅固だというのだ、老人の声もまた。
「ではここはだ」
「今はですな」
「本願寺には残ってもらいますか」
「本願寺は敵だ」
それに他ならないというのだ、彼等もまた。
「しかしだ、潰
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