暁 〜小説投稿サイト〜
打球は快音響かせて
高校2年
第十四話 デビュー戦
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のグランドに赴いて練習試合を行っていた。ちょうど一試合目が終わった所で、鷹合と宮園がクールダウンのキャッチボールをしていた。

「いやぁ、鷹合君のポテンシャルは凄いですね。あの体と、あのスピードは。」
「いやいや、まだまだですよ。課題だらけでして…」
「いや、本当に凄い身体能力です。やりようによっては化けますね。プロも見えてきますよ」
「いやいや、プロだなんて、そんな」

相手校の監督と、乙黒とがバックネット裏で煙草を吸いながら話しているのを横目で見て、宮園は呆れた。何に呆れたかと言うと、乙黒が相手校の監督の言う事を素直に賞賛として受け取っていそうな所である。さっきから、ポテンシャルだの、身体能力だの、「結局今は大した事がない」と思わせるような言葉しか出てきていないではないか。実際、鷹合はこの試合も140キロを越すボールを投げてはいたが、5点を失っていた。終盤は決め球不足で粘られ、何とか威力で押し切るしかないいつものパターンにハマっていた。そしてこのパターンは、昨秋から少しも変わっていない。当時から変わったのは球速が上がった事くらいである。宮園の中では、もう鷹合の投手としての資質にはケチがついていた。また、乙黒の指導者としての資質にも。

「鷹合は高校レベルの素材ではありませんから、大きく型にはめずに育てようと思います!」

この一言に宮園は舌打ちした。
型にはめない?大きく育てる?そう言えば聞こえは良いが、ただの指導の放棄じゃないのかそれは?そのせいでガチャガチャのこのフォームもちっとも修正されないし、鷹合自身も修正の必要性に気づかない。欠点を欠点のまま残してる癖に、何が「大きく育てる」だ。もし鷹合がこの先成長したとしても、それは育てたんじゃなくて勝手に“育った”事にしかならないだろうが。

「ん?どしたんミーやん。顔硬いで?」
「いや、何でもない」

鷹合の言葉に宮園はそっぽを向いた。

「何やねんな〜、ゴメンって次は絶対フォアボール出さへんさけ〜」
(だから、どうやってそうするのかをもっと考えろよ)

ベタベタとくっついてくる鷹合に、宮園はあからさまなため息をついた。
乙黒の笑い声が、それをかき消すように響いていた。


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