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打球は快音響かせて
高校2年
第十四話 デビュー戦
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ーフとなる。

「おいおい、暴走っちゃ!定位置のゴロやけ!」

諌めるベースコーチに、枡田は「だから何やねん」と返す。

「今ショートが投げる前にいっぺん牽制入る動きしよって、ポジション戻るの遅かったんや。打った瞬間、あいつは三遊間に体が向いとったはずや。そこから打球捕るのに二遊間へ体切って、またサード放るのに三塁側に体切って、それができる奴ならまぁこんなB戦には居らんやろ。」
「……お前がB戦におるんが何よりおかしいわ」

ベースコーチが呆れる。
この強かさ。枡田はただうるさいだけの無邪気な野球小僧などではない。馬鹿さと知性、両面を持ち合わせている。強かである。

「…無茶しよって…点差は開いとうのに…だからアホなんちゃ…」

ブツブツ言いながら左打席には3番の越戸が入る。枡田とは正反対に、暗い。まず顔が冴えない。ひょろっとした身体で傘を持って突っ立っているような構えにも何の威圧感もない。

しかし、投手が投球モーションに入るやいなや、その印象が一変する。テークバックで一気に腰が据わり、力感が出る。

「キェェエエエイ!」
カキィーン!

奇声を上げながら捉えた打球は鋭いライナーとなって左中間を破る。ランナー2人を一掃し、越戸自身も2塁ベースに悠々到達。

「…やっぱり2塁止まりかぁ…」

越戸は塁上ではまた根暗の顔に戻って、ブツブツと呟いていた。

「"キェェエエエイ"って何だよ一体」

ベンチで翼は笑う。左肩と肘にはアイシングが巻かれていた。結局この試合は5回を投げて無失点のまま交代した。正直、かなりホッとしている。

「好村さん、安心してますね。それじゃ主将の仕事になってませんよ。」

翼の隣に座ってスコアをつけている京子が、リラックスムードが出ている翼に釘を刺した。無表情でボソッと言うので結構怖い。

「あ…よ、よしまだまだ追加点いくぞーっ!ベンチここ一本打たせるぞ!」
「おっしゃー!」
「大竹ー!甘いのいけよー!」

ハッとした翼がベンチの後輩達を焚きつけ、声を出させる。高校レベルの主将は、大して頭を使わない。頭を使うと、指導者につべこべ言うな、ゴチャゴチャ考えるなと言われるのがオチだ。だからチームの雰囲気を取り持って、後は指導者のお小言を矢面に立って聞いておけばそれで事足りる。主将の本義としてそれが正しいかは置いといて、現実にはそうなってる場合が多い。そして高校生レベルだと、チームの雰囲気に気を配る事すらままならない事も多いのだ。個人と集団の優先順位は頭で分かっていても、行動に表すのは難しい。

「…ふん」

浅海はその様子を見て、鼻で笑った。



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Bチームがホームグランドで試合している頃、Aチームは他校
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