高校2年
第十四話 デビュー戦
[1/4]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
第十四話
だんだんと暖かくなってきた時期。
昼は半袖でも十分イケるが、夜はまだ少しだけ寒いかもしれない、そんな微妙な季節。
空は快晴。土は良い具合に乾いている。
「1番、ショート枡田」
「いぃよっしゃぁぁあーーー!」
ベンチ前に組まれた円陣で浅海がオーダーを読み上げ、名前を呼ばれた選手は大声で返事をする。枡田は常に大声である。
「9番、ピッチャー好村」
「はい!」
ついにこの日がやってきた。
今日は、Bチームの初試合である。
ーーーーーーーーーーーーーーー
(……2年の春でやっと初登板か)
翼は先発のマウンドの足場をならしながら、ホームベース方向を見やる。捕手の見え方、距離感はブルペン投球や、バッティングピッチャーの時と変わらない。そもそもここは、慣れ親しんだホームグランドである。ピッチャーを務める機会も、中学生の頃から数え切れないほどあった。
ただ、草野球をしていた頃の気楽さなどは無かった。翼の顔も口元がピッと引き締まっている。
投球練習をこなす。ストライクはちゃんと入る。
よし、大丈夫。
後輩の捕手が最後の一球をセカンドに送り、内野にボールが回される。
翼のデビュー戦が始まった。
キン!
(ほえっ?)
相手の先頭打者は初球を打ってきた。
翼から見て右側にゴロが飛ぶ。
反応が良ければ翼が捕れたゴロだが、翼は不意を突かれて固まってしまい、そのゴロをスルーした。
「よっしゃぁーー!」
しかし、投手をすり抜けてセンターへと転がっていこうとするゴロにショートの枡田が追いつく。
腕を伸ばしてゴロをすくい、細かくステップを踏んで一塁に送球。矢のような送球が一塁に達し、先頭打者をアウトにとる。
「……ふぅ」
翼はひとまずワンアウトがとれた事に安堵する。
ショートの枡田はニヤニヤ笑っていた。
「ヨッシー今の捕れたんちゃうん?え?もしかして緊張してんの?」
「そっそんな訳ないだろ!たかが練習試合で!」
「ふ〜ん?」
翼は図星を突かれて赤面した。
緊張が一言でフッと吹き飛んだ。
カーン!
「オーライ」
2番打者の打球は内野フライ。
セカンドがガッチリ捕球し、ツーアウトになる。
(…大丈夫だな。そんなに簡単には、打たれない)
翼は打者2人を抑えて自信をつけた。
長打警戒のシフトをバックにつけて、更に投球に思い切りが出る。
大きく背筋を伸ばして振りかぶり、右足を高く跳ね上げる。その足の動きの躍動感を保ちながら一気にステップアウトし、テークバックで巻き上げた細い腕を振り抜く。軸足はプレートを蹴らないが、それでも腕の振りの反動で体は三塁側に流れていた。腕が振れていた。
リリースの瞬間、
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ