第十三話
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
《迷いの森》で体験した、ジェットコースターの恐怖、再び。
前回と違って、森の中じゃないから、枝がかするということは無いが、代わりに、きちんとPOPした巨大花の触手が大量に迫る。
ショウキさんは、それを全て紙一重で避けつつ、走り抜けて行く。
「ちょっと飛ばすぞ!舌を噛まないように気をつけろ!」
ショウキさんの声に、口を噤む。
舌を噛んで死ぬなんて嫌だ。
「《縮地》」
−その瞬間、私は風になった。
あらゆるものが後ろに下がっていき、自分だけが高速で移動している。
例えるなら、電車の中から、窓の外を見ているような速さだ。
口を噤んでいなければ、本当に舌を噛んでいたかもしれない。
私をおぶっているショウキさんは、そのままの速度で巨大花たちを突破し、橋の上のモンスターがPOPしない、丘の頂上へと飛んだ。
「ふう。着いたぞ、シリカ。」
「うわあ…!」
《思い出の丘》の頂上は、空中の花畑。そう例えるのがふさわしい、綺麗な花々が咲いている場所だった。
「ほれ、降ろすぞ。」
ショウキさんのかけ声と共に、お姫さま抱っこが解かれて、地上に降ろされる。
「あ…」
…恥ずかしいから、ちょっと残念がる自分がいたことは、ショウキさんには秘密にしておこう。
「ここに、《プネウマの花》が…?」
「ああ。ええっと…」
アイテムストレージから、メモ帳を取り出して読むショウキさん。
ショウキさんのそういうところが人間らしく、NPCではなく、自分と同じ人間だということを再確認させてくれる。
「真ん中の方にある岩に、そのてっぺんに…」
ショウキさんの言葉が終わる前に真ん中の方に駆け出し、《プネウマの花》を探す。
白く輝く大きな石があり、そのてっぺんに…
「ない…?」
何もなかった。
もしかして、何か失敗したのだろうか?
「ない…ないよ、ショウキさん!」
滲む涙を抑えられず、ショウキさんに向かって叫ぶ。
「泣くな泣くな。よく見てみろ。」
ショウキさんの言葉に、もう一度岩を見てみると…
「あ…」
岩のてっぺんから芽が伸び、光を放ちながら成長していく。
−綺麗…
そうして現れた白い花を、指で触れてみる。
ネームウィンドウに表示された名前は…《プネウマの花》
「…これで…ピナを生き返らせられるんですね…」
「ああ。じゃ、さっさと街に帰ろうぜ。ここじゃ、何があるか分からん。」
本当は、転移結晶でワープしてしまいたかったが、転移結晶はとても高価だ。
いざという時の為にとっておく必要がある。
「じゃ、また抱っこを…」
「…嫌です!」
若干迷ってしまった
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ