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銀河英雄伝説<軍務省中心>短編集
シェルター
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 その日、新銀河帝国軍務尚書パウル・フォン・オーベルシュタイン元帥は、官房長アントン・フェルナー少将と幾人かの護衛を連れて、新設される陸上訓練施設の視察へ出かけていた。自由惑星同盟が有名無実化した現在、新たな軍事施設の必要性に疑問も呈されるところではあったが、であればこそ、実践の機会の少なくなる将兵たちの訓練施設を確保する必要はあるだろうというのが、施設建設の理由であった。

ともあれ、あとは正式な認可を待つばかりとなったその訓練施設の視察に、オーベルシュタインは昼からの半日を費やすことになっている。
「お待ちしておりました、軍務尚書閣下」
防弾対策の取られた地上車から降り立った軍務尚書一行を出迎えたのは、不健康に青白い皮膚とでっぷりとした腹が狸を思わせる軍事設備管理局長と、痩身で吊りあがり気味の目から狐を連想させる設計建築責任者の二名であった。フェルナーは上官の斜め後ろに降り立つと、あと一名の不足を咎めるように眉根を寄せた。その表情に気が付いたのか、管理局長の方がすかさず「現場責任者はこの中でお待ちしております」と付け加えた。
オーベルシュタインは首肯して先を促し、その施設へと歩を進めた。
「こちらが主な屋内訓練場を備えた建物です。陸戦訓練、空戦訓練、砲塔訓練、操縦訓練等の各種屋内訓練場と医務室、静養室からなっております。この建物の南には大規模屋外演習場と、その西に宿泊施設があり、総面積約35万平方キロメートルです」


現場責任者を名乗る男と合流し、管理局長が案内役を務める形で視察は進んだ。前王朝からの悪しき因習から脱した、華美でない機能的な造りの訓練施設は、少なくともこれまでのところ不備な点も見当たらなかった。
しかし、フェルナーの頭の隅で、釈然としない何かが漂っている。
施設の前に降り立った瞬間から、その違和感がつきまとい、油断するなと警告を発していた。

軍事設備管理局長にしろ設計士にしろ、姓名はともかく人相まではフェルナーも知らない。事前にデータバンクへ照会しておかなかったことを後悔していた。彼らが工作員でないと言い切れる証拠はひとつもないのだ。それに、現場責任者だけが屋内にいたのはなぜか?何者かとすり替わるためではなかったのか?
違和感の正体を掴めぬまま、フェルナーは小走りでオーベルシュタインの背中を追った。
「閣下」
声をひそめて上官の肩の間近へ寄ると、オーベルシュタインがちらりとフェルナーへ視線を向けた。
「理由は申せませんが、ご用心下さい」
早口で告げたが、軍務尚書は理解した様子で小さく肯いた。何事かを発しようと、色の薄い唇が開かれた時、前を歩いていた管理局長が足を止めた。

「この建物ではこちらが最後になります」
勿体ぶった口ぶりそう言うと、電動扉の脇のパネルを操作して見せる。
シューッと音を
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