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鬼灯の冷徹―地獄で内定いただきました。―
伍_週刊三途之川
一話
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 あれ?猫だ。着物を着た猫がいる。
三途の川周辺の清掃業務から閻魔庁へ戻ってきたミヤコは、門の前でメモ帳を片手にぶつくさ言っている猫を発見した。
そろそろ鬼灯が付きっ切りになることもなくなり、任せられる仕事も複雑なものでは全くないので、ミヤコはある程度なら一人で動けるようになっていた。
そしてこの期に及んで、猫が服を着て二本足で立ち、人間の言葉を話すことに驚きはしなかった。
地獄には変わった動物が山のように存在しているのだ。

「何やろ、あの猫」

箒を肩に担いだまま、少し離れたところからその猫を見ていた。
特に何をしようという訳でもなく、ただ誰かを待っているような素振りをしている。
もしかすると鬼灯に用事があるのかも知れない、とミヤコは思った。

「もしもし、そこの猫さん」

ミヤコが近寄り声を掛けると、尻尾が二股に分かれたその猫はくるりと振返る。
大きなアーモンドの形の黄色い目が、キョロリと彼女を見た。

「おおっ、あんたかい!臨死体験中でここに勤めてるってモンは」

猫はやたらと大きな声で興奮したようにそう言うと、袖の内から名刺を取り出しミヤコに差し出した。
『週刊三途之川専属記者 小判』と書かれている。
ついでにと、その『三途之川』も渡してきた。

「わっちはその雑誌の記者をやっとるモンでさ、ちょっとあんたのこと、取材させてもらいたいニャあと思っておるんだわ」

「いきなり何やそれ。わたしが雑誌に載るような価値、あるんかなあ」

「あるある、大ありさね!」

小判は目をギラギラさせて言った。
まさか用のある人物が自分のことだとは思いもしなかったミヤコ。
何にせよ、鬼灯には相談しなければいけない。
『三途之川』はどう見てもゴシップばかりが載っている雑誌だし、むやみに何か話してもロクなことにはならないような気がした。

「最近はアイドルやタレントばっかりじゃ、読者も飽きちまって反応が甘いんだわ。そこで、あんたに目を付けたって訳さね。『閻魔庁、鬼神・鬼灯の元で働く臨死体験中の人間!』こりゃ目を引く見出しにニャりそうだろ」

「いやー、どうやろ。とりあえず鬼灯さんに報告しないと、ここでホイホイいろいろ話しても、何か信用できへんなあ。ここに載ってるピーチ・マキとかいうかわいいアイドルの記事だって、あることないこと書いてるんやないの?」

パラパラとページを捲る中で見つけたピーチ・マキの記事を開きながら、ミヤコが言った。
何度か食堂のテレビで見たことがある。今地獄で人気上昇中のアイドルらしい。
鬼灯は、何度か会ったことがあると話していた。

「そんニャこと言わんでさあ、それにあの男には内緒にしてくだせえよ、せっかく胃潰瘍も治ったとこなんでさ」

「え?胃潰瘍?」

「あの
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