弓を引く
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に右手を添える。
親指と人差し指。つの形のそれを矢筈の場所にかける。かけ、軽く手前に捻るようにして弦を固定する。
弓掛の親指、その根元部分には筋が入っている。そこに弦をかけるように。矢筈は親指のすぐ近くに。
脇を広げるように軽く腕を外側に捻る。体の前に丸が開くように。
師は「大木を抱くように」「嫌いな女を抱くように」腕を開けと笑って言っていた。
静かに顔を横に、射場へと向ける。
静かに降る雪は既に積もっていた。暗闇の中にはただただ白い大地が広がっている。
その向こう、視線の先。舞い落ちる雪の向こうには少女が掛けた尺二的が一つ掛けられている。
その的を少女は静かに見据える。瞳は大きく開かない。
「雪の目付」。雪を見るときのように、ただ一つに重きをおかない視線で的を見る。
少女は静かに息を吸う。
打ち起こし。
静かに息を吐きながら両の手で弓を上にあげていく。肩を上げず、肩甲骨を下に降ろしつつ前に貼り付けるように。
目の前に見えぬ壁が有り、そこに弓を擦り上げながら持ち上げるように弓をまっすぐに持ち上げる。
上がりきらなくなったところで小さく息を吸いつつ、脇の下を前へと持ち上げるように弓を水平に左にずらし第三を取る。
無理に力で送るのではない。見えぬ壁に押し付け続け、すりあげる思いで。十引く内の三を引く。
動作に節目を作ってはならない。射法八節は八つに別れながら一つの動作だ。名による区切りが誤解をさせるが、元は一つの動作を八つで表しただけ。
その動作に切れ目はなく連続したものだ。最初に生み、生まれた力を切らしてはならない。切れればそこに緩みが生まれる。
引き分け。
息を吐きながら少女は弓を引き分けていく。
馬手と弓手に力を込めてはいけない。筋肉で引くのではなく骨で引くのが弓だ。
手の力は緩めたまま、第三から続く力の流れで引き分ける。
肩甲骨を背中に最大限に貼り付け、そのまま左右に開くごとく。胸を前に押し付け、大きく開くように。
両方の二の腕を後ろから掴まれ、手前へと捻られてみるといい。胸の前が開き腕が横へと動くだろう。肩と一直線上の位置に来るだろう。
弓手の手の内は親指と人差し指の又を握り革に擦りつけるように、小さく巻き込むように運ぶ。肘は曲げず真っ直ぐと。
もう開かぬというところまで開き、そこで堪える。
解。
ただ堪える。否、開き続ける。
引き分けの力の流れを只管に続ける。堪えようと力を止めれば緩みが生まれる。力は止めず込め続けなければならない。
肩甲骨の貼り付け、胸の開き、手の内の脱力、肩の下げ、胴の支え、腹に落とした息。その全てを継続し、込め続ける。
息を吐き腹に落とし続け、引き分け続ける。
そして数秒の後、もうこれ以
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