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描写練習 動作編
弓を引く
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[1] 最後
 音もなく吐き続けた息を止め、その時を待つ。
 少しして、自然と離れた矢は、タン、という小さな音と共に的に突き刺さった。




 床板が貼られた弓道場に立つ。静かに息を一度吸い、吐く。気温の低さから息が白く揺らぐ。
 道場の広さは六人立ちが一つ取れる程度の小さな道場だ。床板はニスの輝きをなくしどこかくすんだ色をしている。
 門下生も少ない。錬士八段の師範はいるが呼び込みを積極的に行っているわけでもない。両手で数えられるだけの人数程度だ。
 そんなだから日頃も人は少なく、弓を引きたいものだけが来たい時に来るというもの。
 雪が降り積もっている今日、この時。他の人間が誰一人いないというのも当然の帰結だ。

 少女は一人袴に着替え右手に弓掛をつけ弓を握る。
 重さ十七キロの練心。少女の細腕を思えば強い張りのそれを携え、弦を口に咥える。壁に掛けられた木版の凹みに裏筈をかけ、元筈を膝に乗せ体重をかける。しなった弓に口から外した弦をかける。
 久々の弦貼り。少女はわらじで何度か慣らした後、矢筒から矢を取り出す。必要な分だけを手にとり後は矢箱へ。

 吐き出す息が端から白く曇る。顔を向ければ夜の中こんこんと降り積もる雪が目に映る。
 道場の電球は古く明かりは弱い。月の明かりの方が強く目に映るようにさえ見える。
 矢を四本持ち入場。双の拳は腰骨に。左に握った弓の裏筈は床につかぬよう。右に握った矢束はバラけず弓を並行に。
 すり足にて入り射場を向く。止めた足から右を出し、視線を動かさぬまま、次いで出した左を腰を切りつつ僅かに滑らせる。揺れる体のままに右は反対に滑らせ、体を九十度横へ。

 足踏み。
 つま先同士の線上が射場へ伸びた体勢。足は逆さハの字。開きは肩幅。体の支えを地に立てる。

 胴作り。
 腹に息を落とし、肩の力を抜き重心を下に。丹田へと。太腿を軽く内から外に向け捻るように力を込め足を張る。支えの支柱を作る。足の張りを抜いてはならない。腹を弛めてはいけない。力は下へ、丹田へ。地に根を張るごとく体を支える。

 顔を前に戻し矢を置く。二本置き、二本持つ。鏃近くを二本、薬指と小指で主に支え持つ。
 弓を起こす。静かに左の拳を真っ直ぐに弧を描くごとく前に出し、弓を床に垂直に起こす。
 右の手にて弦を自分の前へと回す。そのまま左へと右の拳を送る。
 左の拳の指で矢の一本を挟み、右の拳を戻す。支えられた矢の矢筈を右の指で静かに押し、弦枕にかける。
 右の拳を腰へと戻す。ゆっくりと左の拳を下におろす。弓の元筈を左足、弁慶の泣き所に当て、そこで支えるかの如く。
 小さく息を吸い、小さく息を吐く。溜まった無駄な力を吐く息とともに捨てていく。

 取りかけ。
 僅かに弓を右へ寄らせる。弦枕にかかった矢筈のあたり
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