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久遠の神話
第九十七話 ラドンその十一

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「闘うつもりはないさ」
「そうだな」
「俺はもう最後の一戦をしてな」
 そのうえでだというのだ。
「もう降りるさ」
「そうだな、だからだ」
「俺とはか」
「闘うつもりはない、そういうことだ」
「わかったさ、それじゃあな」
「あんたには剣は出さない」
 そしてだ、力も使わないというのだ。
「勝手にすることだ」
「そうさせてもらう」
 こう話してだ、そのうえでだった。
 加藤は中田に背を向けた、そのうえで彼に告げた。
「あんたとは次に会ってもだ」
「その時はだな」
「ああ、只の知り合いだ」
 それに過ぎないというのだ。
「敵ではない」
「そうなるな、まあ生きていられるかはな」
「最後の闘い次第だな」
「そういうことになるな」
「そうだな、死なないことは祈っている」
「おいおい、らしくない言葉だな」
 中田は自分に背を向けている加藤に笑ってこう言った。
「人の心配をするのか」
「駄目か」
「いや、意外だなって思ってな」
 闘いにしか興味がないと見ていたからだ、それでこう言ったのである。
「違うんだな」
「俺も人間のつもりだ」
「だからか」
「それ位は願う」
「俺が生き残ることはか」
「ましてやあんたは嫌いじゃないしな」
 嫌いではない相手にはというのだ。
「これ位は祈る。祈るだけだがな」
「そういうことか、じゃあな」
「またな」
 こうしたことを話してだった、そのうえで。
 加藤は中田と別れてそのまま去った、その彼が来たところは。
 駅の裏だった、そこに来るとだった。
 声がしてきてだ、こう言ってきたのだった。
「あえてここに来られましたね」
「今ここは人がいないな」
「はい」
 その通りだとだ、声も加藤に答える。
「その通りです」
「なら都合がいい、今日はここでだ」
「闘われますか」
「怪物は出せるか」
「何時でも」
 これが声の返答だった。
「出せます」
「なら楽しませてもらう」
 声のその返答を受けてだ、加藤はすぐにだった。
 右手に剣を出した、その夜よりも黒い剣を見てだった。
 声はだ、こう言うのだった。
「さらに黒くなっていますね」
「そういえばそうだな」
「貴方の力がそれだけ強くなっているということですね」
「俺の闇の力がか」
「はい、その力が」 
 まさにだというのだ。
「強くなっていますね」
「そうだな、しかしだ」
「しかしですか」
「その力をだ」
 剣を構えつつ怪物を待ち言うのだった。
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