第九十七話 ラドンその十
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「それだけか」
「そうか。まあ選挙に行くのならな」
「構わないか」
「政治参加も国民の義務だからな」
「義務を果たしているつもりもないがな」
「ただ嫌いな奴に投票しないだけか」
「その意思表示をしているだけだ」
あくまでだ、それだけだというのだ。
「俺はな」
「そうなんだな」
「それだけだ。もっと言えば俺はあんたは嫌いじゃない」
「へえ、そうなんだな」
「剣士の中で嫌いな奴はいない」
それも一人もだというのだ、中田だけでなく彼以外の十二人の剣士全員が嫌いではないというのである。
「だがだ」
「闘いたいんだな」
「闘うことは俺の生きがいだ」
「趣味どころか、か」
「生きがいだ」
それだというのだ。
「俺にとってはな」
「だからあんたは闘うんだな」
「闘っていると気分がいい」
表情は変わらない、口調も。どちらかというと静かでさえあり淡々としてそのうえでこう中田に言うのだった。
「だから闘う」
「ストリートファイトもしているんだな」
「今もな」
「それで警察に睨まれていてもか」
「闘う」
あくまで、というのだ。
「裏の世界でもそうしている」
「やばいだろ、それは」
「そんなことは俺には関係ない」
裏の世界、そちらにいることもだというのだ。
「俺は闘えればそれでいいからな」
「だから戦いで生き残ってもか」
「闘い続けることを望む」
この願いも変わっていなかった、それも全く。
「それだけだ」
「わかりやすいな、じゃあな」
「いや、今はだ」
「おいおい、やらないのかよ」
「あんたは戦いを降りるな」
このことをだ、ここで中田に告げた加藤だった。
「そうだな」
「だからかよ」
「俺は自分も戦いたい奴とだけ闘う」
「戦意のない奴とは闘わないんだったな」
「戦いたくない奴と闘っても何も面白くはない」
これもまた加藤の考えだった。
「何もな」
「そういうことなんだな」
「そうだ、だからもうあんたとは闘わない。それにだ」
「それに?何だよ」
「他に四人いるな」
「四人か」
「戦いを止めようとする剣士のうちのだ」
その中のだというのだ。
「四人だ」
「ああ、神父さんや自衛隊の人達か」
「あの四人は戦いから降りる」
だからだというのだ。
「俺はあの四人とも闘わない」
「そうなんだな」
「そうだ、何度も言うが俺は闘う気のない相手とは闘わない」
このことは絶対にだというのだ。
「やる気がないとな」
「そうなんだな、だからか」
「そうだ、今のあんたともだ」
「闘わないか」
「そうだ、あんたもだな」
「ああ、あんたとはな」
中田もだ、明るい笑顔で加藤に言う。
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