#2『教会』
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!このおませ十三歳!!」
そう言ってフェラールが睨み付けつつ見上げたのは、紺のダッフルコートを纏った、精悍な青年だった。
短い銀髪のフェラールに対し、こちらは艶やかな黒の長髪だ。童顔なフェラールと対比するかのように、その顔つきには大人びた落ち着きがある。その上、背丈もフェラールと違って長身の部類に入る。
彼の名はキュレイ・マルーク。フェラールと同じく《七星司祭》のメンバーであり、第二席《死人遣い》の名をもつ存在だ。その大人びた外見年齢からは信じられないほど幼く、実年齢は高位司祭階級では二番目に若い十三歳。ちなみにフェラールは二十五歳なので、その差十二歳だ。しかしキュレイの方が背が高く、人気も高い。序列も上だ。フェラールは、この後輩が憎くて仕方がなかった。余談ではあるが、高位司祭最年少は六歳である。
しかしどうしたことか、外出するときは自然とこの青年……否、少年と二人組になってしまうのだ。そのせいで、一般市民の間ではいつの間にかコンビの様に扱われている。それもまた気に入らない。
いがみ合って騒いでいると、周囲の少女たちがこちらを振り返って黄色いコメントを上げる。彼女たちの反応がキュレイ→フェラールの順番と、なんだか自分がキュレイの附属物の様にみられているのもいただけない。
「大体だな……」
フェラールがキュレイに対して罵倒を放とうとしたその瞬間。
二人が歩いている道の、少し先にある本屋の周辺で、キュレイとフェラールのときに勝るとも劣らない黄色い歓声の嵐が巻き起こった。足りない背丈を精いっぱいに伸ばして人だかりの向こうを見ると、そこによく見知った紫の頭があるのが見えた。顔を確認するまでも無く、フェラールはその人物に心当たりがあった。
「見て見て、セルニック様よ!」
「うっそぉっ!一日に三人も《七星司祭》の方にお会いできるだなんて……!」
そしてその予測は、少女たちの会話を聞いたことによって確信に変わる。同時に、人だかりをかき分け現れた、その青年の姿を見て、それは疑いようもない事実へと昇華した。
女子顔負けの艶やかさを持つ、紫の少し長い前髪が、整った顔つきを隠している。今日は儀礼服でもコートでもない、パーカーにジーンズというラフな格好だったが、仮にも同僚だ。気に入らない存在ではあったが、間違えるはずがない。
彼の名はセルニック・ニレード。《古の錬金術師》の称号を持つ、《七星司祭》が第三席にして、素で魔術を使える珍しい存在としても有名だ。今日は魔導書を買いに来たのだろうか、少女たちに囲まれて苦笑しているその姿が、妙に絵になるのも腹が立つ。
「セルニックさん」
キュレイがセルニック
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