第百六十九話 帝国は余裕
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ないぞ。
「ロイエンタールさんは、ご自分の御子が必要ないと仰るのですか?」
エヴァ、そこまで言わなくても。
「いや、そう言う訳では無く……」
また黙りか、どうしたって言うんだ、まさか子供が出来たのは始めてなのか、それで困惑しているとか。
「それならば、快く赤ちゃんをお迎えすれば良いんですよ」
「実は、聞いて欲しいのですが、自分は怖いのです」
「ロイエンタールさん、何が怖いのですか?」
ロイエンタールが意を決した様にエヴァに向いた。
「奥方、自分は自分が人の親に成れるかどうかが怖くて不安なのです」
「まあ、ロイエンタールさん、みんな初めてだと、不安になりますわよ。夫も初めて私が妊娠したときは、それはそれは、家中をあっちへウロウロこっちへウロウロしながら、不安そうにしていましたから」
エヴァの言葉にも、ロイエンタールの顔は優れないな。やはり彼女とのことは遊びだからか?
「いや、奥方、そう言う不安では無いのです。私が人の親になり、我が子を慈しむ事が出来るかが不安で成らないのです」
そこから、ロイエンタールは自分の生い立ちや過ごしてきたことを語り始めた。
俺もエヴァも話を聞いて絶句した。ロイエンタールに此ほどの過去があったとは、此では女性不信で皮肉屋になる訳だ。
「ロイエンタールさん、貴方に知った風に御両親のことや過ごされてきたことをとやかく言うつもりはありませんわ。けど一言だけ言わせて下さいな。忘れないで下さい貴方を待っている人がいる事を、そして貴方にはその人を慈しむ事が出来ると」
それを聞いてロイエンタールが俯いてしまった。泣いているのかと思ったが、それを察したのか、エヴァは、ロイエンタールの頭を優しく抱きしめている。
暫くして、落ち着いたロイエンタールは、俺達に“ありがとう”と言って帰って行った。
その後、第六次イゼルローン攻防戦の後、武勲をあげたロイエンタールは中将となり正規艦隊司令官に親補された。翌年の3月にレテーナと正式に婚姻し、4月に女児が誕生した。しかしあのロイエンタールがあんな親馬鹿に成るとは誰も思っても見なかった。
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