Episode24:魔法記者
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人の反応に、雫は安心するも少し残念がる。あの二人は明らかにわざと二人きりの空間を作り出したというのに、それに気づかないとはどれだけ鈍いのだろうか。
雫は客観的に自分のことを捉えることができる冷静な人間だ。だから、彼女の周りの不器用な人達よりも、自分の気持ちに気づくのが早かった。
ただ、今の自分が抱いている気持ちが、恋心だというのは断言することはできない。そう断言するには、まだ彼との付き合いが短すぎた。
しかしモヤモヤとして気持ちが悪いのは確か。それなのに目の前の元凶である彼は呑気に欠伸なんてかいている。
それに対してムッとした雫は、彼のバゲットの中にある最後のサンドイッチを拉致して、隼人が静止する間もなくその小さな口に放り込んだ。
「あああ、俺の最後のサンドイッチがぁぁ!?」
「隼人さんが悪い…」
「なんで!?」
モキュモキュと咀嚼する雫に、隼人は空になったバゲットを見て涙を流すのだった。
「いやぁ、青春してるなぁ隼人は」
「あの、なんで十三束さんはわかったんですか?その、雫のことを」
所変わって、隼人と雫から少し離れた角で、今の状況を作り上げた元凶の二人はその様子を眺めていた。
「堅苦しいのは嫌いだから鋼でいいよ。まあ、僕は隼人と比較的付き合いが長いからねぇ…あいつに好意を寄せる女の子はいっぱい見てきたんだ。だから、なんとなーくだけどわかっちゃうんだよねぇ。ほんと、訳わからない能力が備わったものだよ」
あいつは鈍感だったから、僕が色々手を回してあげなきゃ女の子が可哀想だったんだよ、なんて言う鋼だが、彼とてかなりの朴念仁である。
隼人と鋼の二人でお出かけしていた時に、かなりの視線が二人に集まっていたが、二人はまったく気づく様子はなかった。つまり、鋼は決して他人のことを言えないのである。
「た、大変だったんですね…」
しかしそこは流石と言うべきか、自分の気持ちには鋭い上に思い込みが激しいのに周りの気持ちには疎いというほのかは、鋼に同情の視線を向けるだけに留まった。
物陰から見つめる二人の生暖かい視線に、隼人は最後まで気づくことはなかった。
「…ふう、ただいまー」
玄関を開けて靴を脱ぐ。誰もいないのにただいまと言ってしまうのは、もうそれが習慣になっているからだろう。しかし、それに返事がないと少し寂し「お帰りなさい!」い。
「なんでいるのさ。そしてなんでくつろいでるのさ」
そこには居間でくつろぐ少女の姿。昨日、協力関係になった九十田エリナがいた。
「私は魔法記者ですよ?あなたの家の場所を特定した上で鍵穴の形状を調べて合鍵を作るなんて朝飯前です!」
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