暁 〜小説投稿サイト〜
打球は快音響かせて
高校2年
第十三話 これが後輩?
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ンタクトだったような気がする。しかしその時は、翼はその誘いを断った。海はずっと見ていたが、しかし泳いだ事は殆ど無くて。一言で言うと、怖かった。
ただ、海の青にバシャバシャと白い飛沫を立てて動き回る葵の様子が、とても眩しかった。

小学校に入る頃には、既に翼は泳ぐ事のとりこになっていた。あの葵の楽しそうな姿が忘れられず、親父に泳ぎ方を教わって、自らあの海を泳ぎ回る事を覚えたのだった。

翼を海へと誘った葵は、翼と同じ小学校に入学していた。そこでも葵は、武という丸い顔の少年と共に、地元保育園に通っていなかったために1人ぼっちになりかけていた翼を遊びに連れ出した。
そうして3人の遊び場になったのが、あの西の崖だった。

中学になると、さすがにお互いを男女として見ない訳にはいかなくなった。男女の違いというモノを、子どもながらに知る時が来たのである。この3人組も、葵が女子のグループに行ってしまう事で、翼と武のコンビになる事が多くなってしまった。小学校ではいつも一緒だったが、ここでやっと葵と距離が出来たのだ。

翼としては、葵が離れて行った事よりも、葵が居ない事に慣れていく自分がどうにも怖かった。あんなに一緒だった人間が、傍に居ない事に慣れていってしまう。関係が過去のモノになっていく。諸行無常。それを受け入れるほど翼は達観などしていなかった。

中2の時に心を決めた。
成長していく中で、女である葵と「ただの友達」で居られなくなってしまうと言うのならば、いっそ俺と葵の関係のあり方を変えてしまおう。
男と女の関係を作ろう。
そうして、翼は告白した。

「うん、ありがとう!」

葵の返事は、OKでも、No ,thank youでもなく、「ありがとう」だった。




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「………いやー、6歳から話が始まるとは思ってなかったわー」
「し、仕方ないだろ!話せって言ったのはお前なんだからそれぐらい責任持って聞けよ!」

半目になっている枡田に対して、照れ臭さを紛らわすかのように翼は怒鳴った。
こんな風に、人に葵との関係を語ったのは初めてかもしれなかった。大江にも山崎にもこんなに細かくは言ってないし、野球部のメンバーには表面的な事しか語った事がない。わざわざ語るようなモノでもないからだ。

「でもそれ、あれですねぇ。何で葵ちゃんがヨッシーに食いついてきたんかがイマイチよう分かりませんよねぇ。ヨッシーが葵ちゃんにお世話になりっぱなしってのはよーく分かりましたけど」
「あ…」

枡田に言われてそれに気づいた自分に翼は愕然とした。確かにそうだ。どうして、葵は最初、自分なんかに関わろうとしたんだろうか?
好きとか大事にしてるとか、そういう言葉はたまに聞くが、それがどうしてか、とい
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