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打球は快音響かせて
高校2年
第十三話 これが後輩?
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第十三話



「っしゃアーーッ!回しましょ回しましょ!パッパパッパと回しましょーッ!」

Aチームが遠征に出て行った休日の練習。
残った1年生と一部の2年生で構成されたBチームがボール回しを行う。そこでも、枡田がよく通る高めの声ですこぶる饒舌に喋り続けていた。
1年生は声の出し方すら分かっていないのが当たり前だが、しかし枡田は次々と言葉が湧いて出てくる。2年生相手にもちっとも遠慮する事がない。

「はい手本見せます見せますハイ見せたーッ!」

自分の番で送球を捕った枡田は珍妙な声を上げながら、飛び跳ねるようにしてボールを送る。持ち替えが抜群に速く、小柄なのに肩もかなり強い。スローイングは3年生の内野手にも全く引けをとらない。

「あっ!」

翼が投げたボールは高くスッポ抜け、サードの頭を越えていった。そんな失態を目の当たりにして、こいつが黙っていない訳がない。

「えぇーっ!?ウソーッ!?ヨッシーそれは無いわー!相手気遣ってよもっとー!相手を葵ちゃんやと思って投げよーよォ!葵ちゃんやと思ってさァ!」
「……」

翼は顔を引きつらせる。が、ここまで枡田が先輩を何とも思っていない事に、むしろ1年生の方が引いていた。

パシッ!
「おおっ!良いねェー!今、中根が葵ちゃんになったよ葵ちゃんにー!」

翼が今度こそ相手の胸にナイスボールを投げると、枡田はまた大きな声ではやし立てる。

「…葵ちゃんって、誰だ?」
「多分、好村さんの彼女さんですよ。実家の方に居るみたいですけどね。」

Bチームの責任者である浅海がスポーツドリンクを用意している京子に尋ねると、京子は振り向きもせずにそう答えた。

「ふーん、あいつも男なんだなぁ。……葵ちゃん」

浅海は普段あまり見せないような浮ついた笑みを浮かべて頷いた。



ーーーーーーーーーーーーーー



「ヨッシーまた来ましたよー♪」
「」

全体練習後の自主練習も切り上げ、風呂にも入ってさぁ寝ようかと言う所で枡田が翼の部屋にニコニコしながらやってきた。進級時の部屋替えの結果、翼はたまたま2人部屋に1人で住む事になっていた。それを良いことに、枡田はよく翼の部屋にやってくるのである。

「そんな嬉しそうな顔せんでもええやないですか〜もう素直ちゃうねんから〜」
「」

翼は鷹合と相部屋だった1年の頃、いびきはうるさいし、唐突に深夜に起きて筋トレ始めるし、上段のベッドからむしり取った陰毛が降ってくるし、さらにはパリパリのティッシュも落ちてくるしで、散々に迷惑を被っていた。1人部屋になった時はやっと安住の地を得たと涙を流さんばかりに喜んだというのに、今度はこのクソ生意気な後輩である。もうツッこむ気にすらなれない。ため息ばかりが口を突い
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