第一物語・後半-日来独立編-
第七十章 竜神《2》
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られた。
世界という広大な存在に。同じくらいに世界の理不尽が胸を打った。
特に自分が住んでいた日来への理不尽が。
日来という場所が世界からの省かれ者の集まり場だということ。奥州四圏からお荷物扱いされ、各国からも神州瑞穂攻略に最高の位置に存在し、常に狙われていること。
その時に脳裏に過った、とてつもない未来への不安。
誰も自分達を守ってはくれない。ならば、自分達が自分達を守るしかない。
自分を、皆を受け入れてくれたこの場所を守るために力を望んだ。
あの時に変われたのだと思い返すセーラン。
誰かではない。自分がやる、やらなければならない。
「弱いままじゃ誰も守れねえ。だから力が必要なんだ。この手で守るためにも」
ぎゅっと強く拳を握り締める。
「別に弱いままでも何も悪くはねえよ。けど守られるだけってのは堪えられねえ。大切な人や大事なもの失う時が、一番苦しくて哀しいんだ」
「力の得た先に破滅の運命が待っていようと、進んでいくというのか」
「強大な敵が現れて、どうしようもなくなったなら悪魔にだって魂を売って倒してやる。傀神にも言ったが死ぬ気は更々ねえけどな」
「……己は貴様を好きにはなれんな」
一言。
距離を置く言葉を聞くも、特にセーランは気にしていない。
納得したように頷き、素直に受け止めた。
「そっか。俺はお前のこと好きだけどな。仲良くなれそう」
「貴様は仲間のために、己は己の欲を満たすために力を欲した。真逆の考えを持つ存在とは相容れぬ」
「仲間のために力を欲したのって、結局はそれも俺が俺の欲を満たすためにやったものだろ。同じじゃね?」
「違うな。貴様のは欲ではなく願いだ」
厳密に言うと表裏一体の関係だ。
「欲とは自己を満たすためのもの。願いとは誰かのために尽くすもの。欲は欲を満たすための願いであり、願いとは誰かに尽くそうとする欲。
まるで光と影のように、それらは切って切り離せぬもの」
「難しいこといってるけど、結局は同じようなものなんだろ」
「そう思うのならばそれでいい。己にとって結局それは人類の叡知に過ぎん薄っぺらいものだ、貴様がどう思おうと関係無い」
「へいへい、そうかい」
ならそう思うことにしよう。
少しの沈黙。
そのなかで疑問が出てきたため、セーランはそれを口にした。
「竜神さんよお、後なんで姿を急に俺なんかに見せたんだ。嫌いじゃなかったのかよ、俺のこと」
というものだ。
固有空間で姿を見せるということは、真の姿を見せるということだ。つまり目の前にいる竜神こそが本来の姿である。
わざわざ見せる意味があるのか。
別に姿を相手に見せることは特別なことではないが、ここへ来て始めから炎の壁によって姿を隠していたのだ。
隠す意味も無ければ、見せる意味
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