第一物語・後半-日来独立編-
第七十章 竜神《2》
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ンの今無き故郷では伝えられていた。
「出来るのかよ傀神」
一応確かめておこうとセーランは、姿の見えぬ傀神に問う。
すぐに返事は来なかった。
少し経ち、間を開けてから声はこちらへ届いた。
『馬鹿を言うな、崩壊進行は流魔の異常流出が原因の筈……。再生なぞ必要無く、まだ破壊による流魔消滅がマシな話しだ……』
「流魔消滅はもう他国が動いてやってるんだよな。もし俺が破壊の力使えたら、一体どんくらいまで行けるんだ?」
『今の我が宿り主では破壊の力は使えん……。再生の力である“憂いの葬爪”を使っている間はな……』
「もしもの話しだって」
何かをためらうかのような沈黙。
傀神が何を考えているかはセーランには分からないが、傀神なりの考えがあるのだろう。
言うべきか、言わないべきか。
沈黙の長さが傀神の真剣さを表すが、長く続くと思われていた沈黙は案外短いものだった。
『我が破壊の力である“憤怒の火爪”は流魔消滅を行える……。仮に使えたとして、使い続ければ我が宿り主は一夜にして死ぬ……。それに対して消滅出来流魔の量は、最低創生区域全土が半年に使う流魔ぐらいだろう……』
「一日で半年分の流魔をか。魅力的だけど死ぬなら魅了は無しだな」
『宿り主に死なれては我は困る……』
「気にすんなって。死なねえよ、俺は」
『だといいがな……』
それだけを言って、傀神の声が途切れた。
話すことはもう無いということだ。
セーランにも今聞くことは他に無いし、別に後からでも聞ける。今後、傀神の力は必要不可欠だ。
傀神の力がなければ自身はただの人族だということを、セーラン本人は自覚している。
世界を相手にするには自分はあまりにも弱過ぎる。だから神の力を得た。
一刻も早く、世界を少しはマシにするためにも。
話しが脱線した。思ったセーランは竜神に問い掛ける。
律儀に黙って待っていてくれた竜神は、特に思うこともなく自身に向けられた問いを聞いた。
「なあ、竜神さんよお。なんでお前、でいいのか……現実空間で暴れてるんだ。宿り主である奏鳴が疲弊してるの分かってるだろうに」
炎の壁の向こう。竜神が動いたのが、炎に映る影によって分かる。同時に炎も揺らめく。
熱を感じさせない炎は不思議なもので、ただ傀神と直接会った時と同じように、青い炎がこの空間内を照らしていた。
かがり火のように照らし、上を見上げれば何処までも続く暗闇。
空を飾る星は無く、地上は何処までも広い。
どの辺りから空なのかも分からない空間。
自分の居場所であるこの空間で、一人の人の質問に竜神は答える。
「己の宿り主は怒りを黄森長に感じていた。神具・政宗によって己の宿り主が己に流魔を分け与えた時、流魔が怒りの感情を記憶した。その流魔を受け取ったことによって現
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