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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十二話 奈落
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ドルフ伯、貴方にも降伏して貰います。降伏すれば同盟軍の庇護を受けられる。それ以外にここで安全を得る方法は有りません。フェザーン人に嬲り殺しにされるだけです」
貴族達が顔を見合わせました。躊躇っています。

「降伏した後は輸送船でイゼルローン要塞に移送します。そこからオーディンに戻れば良い」
「……船を寄越せば我々だけで帝国へ戻る。イゼルローンに行く必要は無い」
総司令官代理が笑い声を上げました。
「ブルクハウゼン侯、貴方達に船を与えて逃がしたらフェザーン人が後を追いかけますよ、貴方達を殺そうとして」
貴族達が顔を引き攣らせました。

「同盟軍の捕虜になり同盟軍がイゼルローン要塞に移送する。当然ですが護衛を付けます。そうなればフェザーン人達は何も出来ません。イゼルローン要塞に着けば後は帝国軍が貴方方の安全を保障するでしょう。如何です?」
「……」


貴族達を乗せた輸送船がゆっくりと宇宙港から浮上しました。護衛の駆逐艦が五隻、上空から周囲を警戒しています。
「宜しかったのですか?」
シェーンコップ准将が問い掛けるとヴァレンシュタイン総司令官代理は微かに苦笑を浮かべました。
「心配ですか?」
「ええ、後々政府から何か言われるかもしれません」
総司令官代理の苦笑が大きくなりました。

「ブラウンシュバイク公の甥が二人いますからね。殺すのは拙いし見殺しにするのも良くありません」
チラっと准将が総司令官代理を見ました。
「捕虜として同盟に留めるのは拙いのですか?」
「拙いですね。この後同盟と帝国の間で交渉が行われるでしょうがあの二人を使って交渉を有利に運んだ等と言われては将来的に面白くありません」
シェーンコップ准将が“なるほど”と頷きました。輸送船が徐々に上空に上がっていきます。少しずつ小さくなっていく。

「心配は要りません。あの連中はもう終わりです。ブラウンシュバイク公は門閥貴族達を排除したいと考えている。今回の敗戦は良い口実になるでしょう。彼らは抵抗したくても兵を失っています、何も出来ない。滑稽な事に彼らはその事に何も気付いていない」
「……」

「それに彼らを処断する事はフェザーンに対する謝罪にもなる。我々が手を下してブラウンシュバイク公に恨まれる事は有りません。フェザーンもあの連中を殺して恨まれることは無い。ブラウンシュバイク公に任せておきましょう。政府にもそう伝えます」

なるほど、と思いました。甥二人を処断すればブラウンシュバイク公は情に流されない公正な人物だと評価されます、平民達からも信頼もされるでしょう。押付けられた事を不満に思ってもこちらを恨むことは出来ませんし効果を考えればあの二人を処断せざるを得ない……。

相変らず性格が悪いです。呆れて顔を見ていると視線に気付いたのでしょう、
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