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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十二話 奈落
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を向けた方向には初老の紳士と若い女性が居ました。二人とも顔が強張っています。初老の紳士が咳払いしました。
「フレーゲル男爵、自重して頂こう。私が卿らを此処に入れたのはあくまで一時的な避難として認めただけだ。我らの安全を脅かす行動を取るというなら出て行って頂く」

「我らを追い出すというのか!」
フレーゲル男爵とは別な貴族が激高しました。
「卿らの出兵は政府とは無関係に行われたものだ。である以上ここに匿う義務は無いものと私は考える。違いますかな、ブルクハウゼン侯」
「……」

あらあら仲間割れ? マリーンドルフ伯の言葉に貴族達が渋い顔をしている。それにしてもあの激高した人がブルクハウゼン侯? 貴族連合軍の総司令官がこんなところで隠れていたなんて……。ちょっと無責任じゃないのかしら。戦死した兵士が可哀想……。

「心配ない、マリーンドルフ伯。あの男を人質にすればよい。船を用意させ帝国に帰るのだ。あの男を連れて帰れば伯父上も御喜びになるだろう」
フレーゲル男爵が厭な笑みを浮かべながら総司令官代理を指差しました。周囲の貴族達が口々にフレーゲル男爵を褒めています。

「無駄ですよ、そんな事をしても」
総司令官代理の言葉に貴族達が不満そうな表情を見せた。
「同盟政府は私諸共始末しろと命じるはずです」
「……」
「亡命者にしては武勲を挙げすぎましたからね。目障りなのですよ、私は。死んでくれた方が同盟にとっては望ましいのです」
「……」

「ヴァレンシュタイン中将は人質になりながらも卑劣な貴族達に屈せず自分諸共攻撃するように命じた。同盟政府はそう発表するでしょう。そうは思いませんか、フロイライン・マリーンドルフ」
総司令官代理が伯爵令嬢に問い掛けると彼女が頷きました。

「その可能性は有ると思います」
「分かりましたか?」
総司令官代理の言葉に貴族達が渋い表情になりました。シェーンコップ准将も“有り得ますな”と頷いています。確かに有り得ないとは言えません。

「安心しなさい、帝国に帰してあげます」
総司令官代理が含み笑いを漏らしました。怖いです、間違いなく何か良からぬ事を考えています。貴族達も何か禍々しいものを感じたのでしょう、不安そうな表情をしています。

「どういう事だ。何故我らを帰す?」
或る貴族が疑い深そうに問い掛けてきました。総司令官代理が名を問うとシャイド男爵と答えました。この人もブラウンシュバイク公の甥だそうです。
「女帝夫君であるブラウンシュバイク公の親族が居ますからね。これからの両国の関係を考えれば殺すのは控えた方が良いでしょう。それに貴方方を殺す事にそれほど意味が有るとも思えません。ああも戦下手では……」
総司令官代理が笑い声を上げました。

「降伏しなさい」
「……」
「マリーン
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