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Myu 日常編
冥星は結構陰湿である
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らせてくれない。困った暴力女である。


「これ以上私を怒らせるなよ、冥星」
「DVは、犯罪だ」

 必死で紡いだ言葉は、少年少女を虐待から守る魔法の言葉。子供たちは社会の宝であり、命は尊いものだ。大人はそれを壊すことは決して許されない。厳格な社会に守られた神にも等しい子供という命は、冥星のような屑を守ることもできるのだ。

「冥星、あんたは、やっぱりあいつの弟なんだね」
「おいおい……それは言わない約束でしょお母さん」

 下手なジョークにわずかな平穏が戻った。しかし、冥星の心は決して穏やかではない。あんな女と比べられるなど、吐き気を催して、ご飯が三杯しかお代わりできなくなってしまったではないか。

「私は……どうしたら……」

 それは、祈りだ。
 死者に対する祈りが明子の口から漏れ出してくる。
 愚かしく、悲しい言葉の綴りを聞いていると、イライラしてくる。
 
 冥星は黙って食事を再開する。何も響かず、何も感じず、黙々と。
 生きるのだ。それこそが、己の成すべきことを成すための唯一の方法である。
 冥星は努力をしない。する必要がないからだ。それは呪いであり、約束だ。
 絶対に頑張らないという、約束――――。

「ってことで勘弁してくれ」
「冥星……そういうことは早く言ってよ。なんだか、悪いことしちゃったね」
「いや、いいんだ。これはこれで」
「結局、達也の願いは叶わず、か」

 三人はあの日からいつも一緒である。なんとなく惹かれあうものがあるのか、それとも冥星という少年のカリスマ性によるものか。いずれにせよ、少年たちは小さな王国を築いた。一人の王様……として認識しているかはともかく。実質的なリーダーは冥星という風になっている。なぜなら、面倒事は冥星に『押し付けて』しまえば大抵なんとかなるからだ。主に、冥星の罰という労働力を犠牲にして。

「あんなやつのどこがいいんだか……」
「冥星はさ、お兄さんだからわからないんだよ。なぁ隼人」
「あ? ああ……まぁ男子に人気があるのは確かだな」
「まじかよ……世の中、間違っているぜ」

 なぜ、兄である自分と妹に天地の差があるのか。永遠の謎ではあるが、決してあんな妹のような性格になることだけは御免こうむる。
 弱すぎて……生きていけない。それは、屑よりもひどい生き物だ。

「まぁでも、隼人は、ほら」
「お、おい!指差すなよ、ばれんだろ!?」
「いいじゃん。許嫁なんでしょ?」
「よくねぇよ! くっそなんでバラすんだよ! よりにもよって冥星に!」
「……ほ〜へ〜……あの、篠崎隼人君に、許嫁、とな? どれどれ……ってマジで?」

 冥星が驚愕したのには訳がある。達也が指差した方をまっすぐに見定めると、そこには黒髪の少女が仲間と共に歩い
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