アリシゼーション編
episode2 そしてまた彼の世界へ3
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も、蒼夜姉さんも……同様のはずだ……」
「……ああ、なんとなくわかりますね」
彼ら四神守は、異常者……もう少し正確に言うのならば、「突出者」なのだ。知識も、思考も、発想力もあまりにも世の平均とかけ離れている。俺は幸か不幸かそんな人間ではないのだが、まさに「そういう人間」であるこの人はさぞやその苦悩のど真ん中にいることだろう。
あるいはそれは一つの「勇者の苦悩」の形なのかもしれない。
「だから僕は……『その理由』をフラクトライトに求めた……もし本当にフラクトライトこそが『その理由』であるのなら……人はもっと高みへといける……幼き頃の訓練で絶対音感を生み出すように……人を人為的に「そういう人間」にできるようになる……」
「呼白さんの研究は、それを……『人間の進化』を目指して、ですか?」
俺の問いかけに、若き科学者はゆっくりと首を振った。
「まさか……僕はただ……周りの人間のくだらなさに……嫌気がさしているだけさ……世界の人間が皆……四神守のように……あるいは茅場晶彦のように……頭の回転が速ければ……もっと世界は違ったものだろうとね……」
呟くように言う呼白さんの顔は、表情こそ先ほどまでの口元の笑みのまま。
しかしその声色には先ほどまでと違い、どこか自嘲気味な響きがこもっていた。
「まあ、全員蒼夜さんや玄路さんな世界なんて俺はぞっとしますがね」
「ふふ……僕は……なかなかに刺激的で……楽しいと思うよ……」
だから俺は、わざとふざけておく。
残念ながら俺にはその苦しみは理解することはできない。いつでも脇役で、いつまでもその他大勢の一人でしかない、そんな俺。呼白さん達のような、あるいはかの『黒の剣士』のような、ごく一握りの人間たちの歩む「勇者の世界」には、俺は行けないのだ。そんな力も、器も、俺にはない。
だが。
(……今回だけは、特別だ)
力が足りずとも。
器でなくとも。
今、この時だけは、俺は『勇者』となる。
「お姫様」を助け出すために異世界へと赴く、そんな一人の『勇者』に、だ。
◆
―――大規模な研究を行うには……「研究の目的」が必要になる……
呼白さんは俺にそう言った。考えてみれば当たり前のことだ。これだけの大掛かりな機械、動かすだけで相当に金を使うだろうことは想像に難くない。それを出させるためには「ちょっと使いたいんですー」で済まないのは自明だ。
そしてその、今回の『研究の目的』。
―――記憶や知識ではない……「純粋なフラクトライト同士の相互作用」……
俺は異世界、『アンダーワールド』に、記憶をブロックされた状態で送り込まれることになる。そして世界のどこかにいるソラを探し出して、そ
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