暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはANSUR〜CrossfirE〜
Ep29それは少し前の出来事〜Return〜
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「迷子か」

「ああ、そのようだが、話が聞けない以上は捜してやることも出来ない」

私が頭を悩ましていると、ルシリオンは「我が手に携えしは確かなる幻想」と詠唱した。彼の手に現れるのは、手の平サイズの小さな白うさぎのぬいぐるみ。それを足元に置いた。少女の目にそのぬいぐるみが入ったのか少し泣きやんだ。
そのぬいぐるみが動き出して、その上踊り始めると、少女は完全に泣きやんだ。少女は目を丸くして、ルシリオンをじっと見た。ルシリオンはニコリと笑って見せると、少女は「お姉ちゃんのうさぎさん、すごいね!」と言った。時間が止まる。そう比喩してもおかしくない状態になった。

「・・・おねえ・・・ちゃん・・・?」

「・・・プッ」

つい噴き出してしまった。私もこの3年ですっかり変わってしまったものだと実感する。ルシリオンが少女に判らないようにジロッと私を睨んでくるが、無視する。

「お・に・い・ちゃ・ん、なんだ。今度は間違えないようにね」

「あ、ご、ごめんなさい・・・お兄ちゃん」

子供心に判ってしまったのだろう。ルシリオンの笑顔が本当は笑顔じゃないことを。

「怖がらせてどうするサフィーロ」

「怖がらせてなどいない。いや、そんなことより、君、お母さんかお父さんは?」

素っ気なく返し、すぐさま少女に家族のことを尋ねるルシリオン。すると少女の目にまた大粒の涙が浮かぶ。これは阻止しなければ、おそらく大変なことになる。
それが判っているからこそ、ルシリオンはさらにぬいぐるいを追加させ、踊らせる。私たちの目の前に、アニマルズの小さなサフィーロ劇団が出来てしまっていた。しかしそのお陰で、少女は泣くことなく笑顔になった。

「――なるほど。母さんと買い物の途中ではぐれたのかぁ」

今度は優しく語りかけるルシリオンが上手く少女から事情を聴きだし、少女の頭を優しく撫でる。

「うん。それでね、えっとね、ママを探したの。でもどこにもいないの」

この少女はどうやらはぐれた時はその場から動かない、という鉄則を知らないらしい。いや、道に迷った時、だったか? どちらにしろはぐれた場所から大きく移動したようだ。

【サフィーロ、この少女の母親を探したいのだが】

【判った。この付近を探してみよう】

【いいのか?】

【ここで見捨てるほど、私は白状ではない】

ルシリオンは少女を肩車し、私たちは少女、名をカタリナの母親を探すために動き出した。背が高いルシリオンが肩車しているため、カタリナは人ごみの上から母親を見つけやすくなる。
そんな中、散々泣き喚いたせいかカタリナのお腹がくぅ〜と鳴った。見ると、腹に手を添えて、少し顔を赤くしたカタリナが「おなかすいた」と呟いた。

「歩きながらでも食べれるモノを探そう
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