第七話:復讐の緋眼
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その背中に声を掛けた。
「えっ?その声……シル……兄?」
しかし、神というのは残酷だ。俺の問いに対する声は今、ここに居て欲しくなかったフローラのものだったのだから。
「フ、フローラ……どうして…ここに……」
「シル兄だって、どうして………シル兄、お父さんとお母さんは無事なの?」
俺が来たことに驚いた後、フローラは不安気に尋ねてきた。何も答えられない。答えられないのは俺自身もまだ認めたくないのかもしれない。この現実を………父さんと母さんが死んだという事実を。
俺は歯を食いしばりフローラを抱きしめ、ただ一言、「ごめん」と呟いた。フローラも震える手で俺を抱きしめた。
ゆっくりとフローラが手を離して立ち上がった。そこで初めて俺が震えているのが分かった。何故震えているのかは明確だ。この妹を、フローラを失いたくなかった。
恐る恐る俺は、フローラを見上げた。今、他人から見た俺は実に滑稽だろう。なんたって妹は目に強い意志を宿しているのに対し俺は震えているのだから。妹より弱い兄、本当に情けない。俺が他人だったらその兄を笑っていただろう。そう思わせられるほどに、フローラは目に何かを決意したかのような意志が宿っていた。
「シル兄」
「な…なん…だ?」
強くあろうとするのに声が自然に震える。
思わず目を離そうとするが、フローラの目はそれを許さない。
「シル兄、生きよう…」
「……えっ?」
「生きよう!!!お父さんとお母さんの分まで!!どちらかが一人だけになっても!!」
「フローラ……」
フローラはそう叫ぶと俺に手を差し伸べた。俺はその手をしっかりと掴んで立ち上がった。こんなところでクヨクヨしてられない!そう思って自分を奮い立たせていた。
「ああ、そうだな。生きよう!!」
「うん…うん!!」
俺はそう言うなりフローラを背負って扉まで走り出した。
「へ?シ、シル兄?ど、どうして?」
「馬鹿か。足怪我してんだろ?あんなところでうずくまってれば誰だって分かるよ」
「うう、面目ないです……」
「クスッ、じゃあしっかり掴まってろよ?」
「了解!!」
返事を聞くなり、俺は全力で扉まで走った。
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「はあ、はあ。つ、着いた」
「ありがとう、シル兄!!大丈夫?」
俺が肩で息をしているとフローラが心配そうに顔を覗き込んできた。そんな、フローラを背中から降ろし頭を撫でながら「大丈夫だよ」というと、近くにいる駐屯兵団の兵に話しかけた。
「すみません!船はまだありますか?」
「子供!?こっちだ!!急ぎなさい。まだ間に合うかもし
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