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打球は快音響かせて
高校一年
第十一話 臥薪嘗胆
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をしていた。11失点の屈辱は未だ忘れようもない。

画面はリプレイに切り替わる。
高垣の左打席からの打球がバックスクリーンへ放物線を描いたシーンだ。第一打席で早くも特大の本塁打を放ったらしい。

「ほえ〜、飛ばすなぁ〜」
「今日の飾磨の風に乗ったインチキとは訳が違うわい」

渡辺が感嘆し、美濃部が飾磨を横目で見ながら小声で呟く。飾磨は「まぁ、ホームランはホームラン、どこに打っても一点やけぇの」と意に介さない。

<あぁ〜打ち上げてしまった〜>

画面の中の高垣は、高々と内野フライを打ち上げてしまった。それを見て、浅海はフン、と鼻を鳴らした。

「長打力はさすがだが、しかし高垣は集中力は全然無いぞ。リードしている事もあるかと思うが、このチャンスにも簡単に打ち上げるし、初回のホームラン以降聖甲バッテリーがマトモに勝負してこない事にイラついて、ボール球に手を出している。付け込む隙はあるバッターだな。」

浅海は鷹合と宮園に、厳しい視線を送った。

「…そんなバッターに、ウチのバッテリーはどういう訳か、ご丁寧にも真っ向勝負を挑んだんだなぁ。武士道とは死ぬ事と見つけたり、か」

浅海の皮肉に鷹合はず〜ん、と落ち込み、宮園はしれ〜っと聞こえない振りをしていた。
そんな浅海の言葉よりも、宮園は高垣の次に打席に入った打者が気になっていた。

<さぁ、二死となって打席には4番の福原。今日はヒット2本。背番号16ながら、この大舞台で4番に抜擢!その期待に応えております!>

宮園にとっては、まさか、である。
小学校から一緒に野球してきた福原が、甲子園の舞台に今立っている。初詣でばったり会った時は、こいつが試合に出るはずはないだろうと高を括っていた。そもそも福原が帝王大水面に進学を決めた時から、「通用しないから辞めとけ」と宮園は止めていたのだ。そんな自分の予想がたった今、目の前で大きく裏切られている。
宮園の頭の中では、記憶を辿って福原との比較が始まっている。スイングは福原の方が速かっただろう、しかしミートは自分の方が上手かったはずだ…何だ、結局そんなに差がないじゃないか。

(差は、あるんだよ…)

宮園は内心で呟く。
ヤツが帝王大(あそこ)に居て、俺が三龍(ここ)に居る。
それこそが差だ。決定的な差だ。
俺はあいつほど、自分の実力を過信…

<打ったー!三遊間を抜ける!帝王大水面7点目、福原今日3安打ー!>

…過信じゃねぇな、もう。
宮園はため息をついた。
ジャージのズボンのポケットの中で、メールを受信したスマホがブルブルと震えていた。
多分、青野からだった。

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