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打球は快音響かせて
高校一年
第十一話 臥薪嘗胆
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なろうとしていた。



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ズバァーーン!

「ほぇぇ」
「速っ」

一冬越して、春になってくると、「野球」の割合が増えてくる。トレーニングばかりの日々から解放され、まぁ野球の練習は野球の練習でキツいのだが、それでも部員達の顔は冬に比べて生き生きしている。

ズバァーーン!

鷹合の球は体格にしっかり比例して、さらに威力を増していた。ブルペンで投げる真っ直ぐは、宮園のミットに高い音と共に叩き込まれる。

(…でも、結局ん所、コントロールはくそ悪いけん、大して成長はしとらんばい)

鷹合の隣で投げ込む美濃部はその威力にたじろぐ事もなく、鷹合の球があちこち散らばっている事に嘲笑を浮かべる。

(…エースの必要条件は安定感、それを持ってるのはこの俺よ!)

パーン!

美濃部の投げ込む球は、ミットに糸を引くように収まった。


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春になると、練習試合も始まる。

カーン!
「ナイバッチー!」
「いいぞー厚沢ー!」
「3年の意地だ3年のー!」

特に新3年生にとっては、この春先の練習試合こそが最後の夏にかけてのアピールの場だ。春の大会が終わってから、というのでは遅い。春の大会後はそれほど時間がなく春の布陣をベースにしていく形になるのだから、冬が明けて横一列でよーいドン!、秋のレギュラーでさえ調子がまだ不透明な春先にこそ、勝負をかけないといけない。そしてその勝負をかけられるのは、人生でたった一度。高校野球に、「もう一丁」はない。

カーン!
「うわぁ」
「出たぁー、高校通算1号。」

しかし往々にして、新2年生の成長が新3年生の「意地」を圧倒する事がある。一冬越して、そこでようやく1年生は立派な高校球児となるのだ。
そして「意地」を力にできるほどの強さを持った高校生も中々おらず、だいたい「勢い」に呑み込まれてしまう。

「レギュラーは渡さないよっと」

高校初ホームランを打って、飾磨がのっしのっしとダイヤモンドを一周する。その顔は泰然自若、余裕に満ちていた。



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<東豊緑準優勝校として2年ぶりに春の選抜に出場しました、水面地区代表・帝王大水面、強さを見せつけております!東越大会チャンピオンの賦真櫛・聖甲学院を突き放しにかかります、七回表6-3追加点のチャンス、ここでバッターは3番の高垣!>

練習試合後の自主練時間に、学生寮の食堂のテレビで野球部の一部の部員が選抜甲子園での帝王大水面の試合を観戦していた。昨秋に自分たちを破ったチームが、甲子園で躍動している。その姿を見るのは、大いに対抗心をかきたてる。
特に鷹合は今にも画面に噛みつかんばかりの顔
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