第四話 第二の怪人その九
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「君達にも」
「あたし甘いものも好きなんだよな」
にこにことしてだ、薊はこう言いながらそのチョコレートケーキを食べていく。裕香のそれより勢いがよく少年的な食べ方だ。
「何でもさ」
「薊ちゃん嫌いなものは?」
「特にないよ」
そうだとだ、また裕香に答える。
「何でも食うよ」
「そうなのね」
「肉じゃがなんて大好きだぜ」
「肉じゃが?」
「あとカレーもさ」
それも好きだというのだ。
「ビーフシチューとかもさ」
「海軍だね」
その三つのメニューからだ、智和はかつての帝国海軍の名前を出した。
「そうだね」
「ああ、院長先生もそう言ってたよ」
「その三つの料理は全部海軍からはじまったからね」
「日本じゃそうだよな」
「肉じゃがもね」
「何か東郷平八郎さんが言ってだったよな」
薊は帝国海軍の英雄、日露戦争の勝利を決定付けた日本海海戦での指揮官の名前を出した。他には黄海海戦でも勝利している。
「ビーフシチュー食いたいって」
「けれど調理、海軍では給養と言うけれど」
「その人が和風に作ったんだよな」
「そうだったんだ、食材は聞いたけれど調味料は何かわからなくてね」
それで和風で作った、こうして出来たのが肉じゃがなのだ。
「だから肉じゃがは和風ビーフシチューなんだ」
「そうなるって言われたよ」
「そうだよな、面白いよな」
「天枢さんはその肉じゃがも好きなんだね」
「大好物だよ」
それ程までだというのだ。
「あれで食う飯は最高だよ」
「本当に好きなんだね」
「まあ何でも食うけれどさ」
それでもだとだ、薊は笑って智和に応える。
「肉じゃがは大好きだよ」
「では寮で出た時も」
「まだ寮では食ってないけれどさ」
「楽しみにしているみたいだね」
「ああ、かなりな」
こうした話もした、そしてだった。
裕香は壁にあるゴシックなドイツ風の時計の時間を見て智和に言った。
「もう五時ですし」
「だからだね」
「はい、もうこれで」
お暇をしようというのだ。
「そうしていいでしょうか」
「そうだね、ではまたね」
「はい、次の機会にですね」
「また来てね」
智和は微笑んで裕香、そして薊に言った。
「何時でも来ていいから」
「それじゃあな、またな」
「お邪魔させてもらいます」
二人も彼と同じ微笑みで返した、そのうえで今日は彼と別れ屋敷を後にした。この日は後は普通の寮生活だった。
だが次の日だった、薊はクラスでクラスの寮生仲間の間で食事を摂り裕香と共に腹ごなしに学校の中を散歩しているとだ、第一体育館の前で。
怪人が出て来た、緑と花で飾られた体育館前に花とは似つかわしくない、もっと言えば緑にも合わない異形の怪人が姿を現してきた。
汚い赤紫の肌に左手は鋏になっ
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