暁 〜小説投稿サイト〜
或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第四十二話 戦争の夏の始まり、或いは愚者達の宴の始まり
[1/8]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
【第三部 龍州戦役】
戦争とは数多の意思決定と多大な事務処理の果てに実行される。
勝った者も敗けた者もその現状を組織として把握し、対応するためには結構な時間を必要とするものだ。
結構な時間であろうとも、人としてのわずかな平穏はどれだけあっても不足するものだ。
あるいはそうであるというべきか。〈帝国〉にとっては異なるのかもしれない。
 侵略者の兵卒にとっても防人にとっても双方の銃後の民にとっても戦場は誰にとっても不幸であるべきだ。
そうでないのであればそれは国家運営の失敗であると私は思う。
北領を陥落させた〈帝国〉東方辺境領鎮定軍に対し、〈皇国〉陸軍軍監本部は龍口湾での水際防衛作戦を構築した。
これに対し東方辺境領姫ユーリアは本領からの増援を引っ張りつつ東方辺境領3個師団を動員した大作戦『アレクサンドロス』を発動。
〈皇国〉内地決戦、あるいは副帝東方辺境親征の始まりである。
この戦争は多くの者の命を奪っただけではなく、多くの者達の運命を狂わせたであろうことだけは断言できる。
――駒城保胤の回顧録より



皇紀五百六十八年 七月七日


 東方辺境領鎮定軍がアレクサンドロス作戦を発動させて半日もせずに龍口湾の制海権はあっさりと〈帝国〉軍の手に転がり落ちる事になってしまった。辺境第6戦列艦隊を出迎えた海上戦力は通報艦のみであったのだからそれも当然だろう。元々、〈皇国〉水軍における事実上の最高司令部である統帥本部は艦隊決戦を選択肢から破棄していたのだから。
それほどに、〈皇国〉水軍と〈帝国〉水軍の保有戦力は隔絶していたのである。
 だが、通報艦は撃沈の憂き目を見る前に役目を果たす事に成功した、皇海艦隊司令部へと導術連絡を飛ばすことに成功したのだ。
 また、水軍とは異なり、龍口湾周辺の陸軍施設は、増強を受けて警戒態勢に入っていたが、やはり海上の覇者である戦列艦の火力に抗するには役者不足であった。
だが、彼らも自身の属する龍州鎮台司令部が設置されている泉川へ導術通報を行うことに成功し、これを受けた龍州鎮台司令部は即座に前進配備していた主力6個旅団を派兵。
これらの部隊は同日夜には到着し、防衛線の構築に成功した。
 更に午前第一二刻の時点で軍監本部は龍州軍へと改組を行う旨を発令。事前に準備を怠らなかった司令部も後方支援部隊、前進を開始した。
 陸軍軍監本部・および、水軍統帥部も事前の計画通り、龍州軍への増援の為に各鎮台からの派遣兵団を送り出す用意を済ませつつあった。東州鎮台は前進配備していた五個旅団に東海艦隊の用意が整い次第、龍州へ輸送を行う為に東州最大の港である灘浜に集結を命じられた。
 背州・及び皇州都護鎮台は、四個旅団からなる派遣兵団を編成して皇海艦隊の護衛の下、海路にて輸送を開始。
 西州鎮台からの派遣兵団も
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ