第57話 「ハイネセン到着」
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、宰相閣下の本心だった。
頑なに統一国家とせねば、とは考えていない。経済的な問題もあるし、ただあまりに好き勝手する気なら、一から作り直す必要があるだろうとも言ってはいたが。
民主主義国家の存在は認めても、それが必ずしも自由惑星同盟でなければならない。とはならないのだ。銀河帝国が唯一の専制国家でなくてもいいように。
新銀河帝国でも、超銀河帝国でもいいのだ。あのお方の割り切り方には、恐れ入る。しかし銀河が統一された暁には、ありあまる軍を持って、外宇宙に向かわれる事だろう。
銀河全てを支配する為ではなく、人類の希望。新しい世界、外の世界を知るために。遠くへ、より遠くへ、向かう。これからは銀河系の端から端に手を届かせるために。
「そちらから送られた、サイオキシン麻薬に関する調査書を、読ませていただきましたが、本気で地球教が裏で糸を引いていると考えておられるのですか?」
「こちらの考えではなく、厳然たる事実です」
「ましてやそれが、地球の復権を目論むための一環とは……」
「事態を楽観視されているのではありませんか? そんなはずは無い。そこまでしないだろう。人は事実を目にしたとき、まずそれを否定しようと考えるものです。そして手をこまねいているうちに、時間だけが過ぎ去っていく。取り返しがつかなくなるまで」
「それは否定できないですな。時間、それは常に有限ですからな」
その後、麻薬に関する調査はしても、信教の自由がある以上、帝国の様な強制捜査はできかねる。と言ってきた。
これも宰相閣下が前もって言っていた事だった。
帝国では地球教を弾圧できても、同盟ではかれらもまた、選挙権を持つ有権者なのだから、思い切った真似はできないだろうと。数が多くなればなるほど、投票数を意識せざるを得なくなる。彼らの機嫌を損ねれば、落選するかもしれない。そうなれば顔色を窺う羽目になる。
ああいうやつらは選挙に積極的だからな。圧力団体の出来上がりだ。大多数の有権者ほど、事態を真剣に考えようともせず、高を括って中々行動しないものだ。そして気づいたときには好き勝手されてしまっている。
宰相閣下はそこまで読んだ上で、協力するのかしないのかを問うて来いと言われた。
だがそれを突きつけるのは私ではない。ブラウンシュヴァイク公爵の役目だ。
私の役目はあくまで事前協議の調整である。
■ハイネセン ホテル「ユーフォニア」オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク■
ケスラー大佐が帰ってきた。
幾分疲れたような表情を浮かべているものの、事前協議そのものはうまくいったのであろう。
「大佐、どうであった」
「やはり、公爵様が止めを刺すことになりましょう」
「そうか……。まったく皇太子殿下はいったいどこまで、民主共和制に対する見識がお有り
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