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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第57話 「ハイネセン到着」
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かと見まごう程の人だかりだ。どの人間も手にプラカードを持ち、叫んでいる。

「あれは?」

 先導して案内してくれていた兵士に声を掛ける。

「地球教の者達です」

 と短い返事が返ってきた。

「地球教か……」

 帝国ではありえない光景だ。信教の自由を保障している同盟らしいが、帝国では地球教は宗教団体というより、数年前の事件以来、麻薬密売とテロ集団の集まりと見られている。
 同盟ではそこまで認識されていないのだろうか?
 いや、政府上層部は認識していても、それが一般市民にまで浸透していないのかもしれない。
 前途多難だ。
 やはりサイオキシン麻薬を前面に出すべきだろう。
 最高評議会ビルに入ると、中には政治家達が群集を成している。どいつもこいつも愛想の良い笑みを浮かべているが、話す内容には辟易させられた。
 事務官と思い、侮っているのかもしれないが、やけに上から目線だ。
 こいつら本当に自由惑星同盟の政治家なのか?
 疑念すら湧いてくる。だがその中に一人だけ、愛想が良いだけでなく、人を惹きつける魅力のようなものを感じさせる男性がいた。俳優のように爽やかな印象を感じさせるよう計算され尽くした振る舞いだ。
 脳裏に危険信号を発せられた。

「ヨブ・トリューニヒトです。初めましてお会いできて光栄です」
「こちらこそ、ウルリッヒ・ケスラー大佐であります。お会いできて光栄に存じます。トリューニヒト評議会議員殿。確か国防委員会委員長を勤められておりましたな」
「ええ、かの宰相閣下の懐刀と呼ばれるケスラー大佐にお会いできるとは」

 ホールの中がざわついた。
 この男。かなりこちらの現状を調べているようだ。それにしても宰相閣下が一番警戒している人物にいきなり直接会うとは、思ってもいなかった。
 がっしり握手したものの、なにやら恐ろしげなものを感じてしまう。
 周囲でフラッシュが立て続けにいくつも焚かれる。眩い光の中、目の前の男だけが、居心地良さそうに薄い笑みを浮かべていた。
 事前協議には彼、ヨブ・トリューニヒトも参加するらしい。
 取り巻き連中を引き連れている。いや、政治的な同志と言っているが、どこまで本気でいることやら……。

「戦後、帝国と同盟はどのような関係になるべきと、帝国宰相閣下はお考えなのでしょうか?」

 会議室に入り、席に着いた途端、切り込んできた。
 ざわめきが一瞬消え、静寂が会議室の中に張りつめる。だがこれに関しては宰相閣下から、指示を受けていた。何時言い出すかまでは知らないが、必ず聞いてくるだろうとの事だった。

「複数の異なる政治体制をとる国家の存在は、自分を映す鏡のようなもの。互いに尊重しあえるような関係を保ちたい。と、お考えであります」

 実のところこれは
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