第57話 「ハイネセン到着」
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ーンの本質なのだろう。多分にかつての帝国貴族と重なって見える。
口では帝国の支配に対する不満を漏らすが、皇太子殿下の統治を受け入れている。
それは皇太子殿下という中心に寄り添いたいという、人間的な弱さ、もろさの現われだろう。帝国の平民達がごく自然と持ちえる安心感が、彼らにはない。ないからこそ憧れが強いのだ。
やはり強固な中心があるのと無いのでは、精神的な充足感が違う。
寄らば大樹の陰とはよく言ったものよ。
銀河には中心になるべきお方が必要なのだ。本来であれば銀河帝国そのものが中心に立つべきであった。それを我ら門閥貴族の思い上がりが、阻害していたのだ。
銀河を統一するための象徴としての、皇帝か……。
皇太子殿下が立憲君主制を採用しようとしている理由が分かり始めていた。
権力などそこそこで良いのだ。
求心力。それこそが必要である。そしてそれは政治的な制度ではなくて、人物。制度ではなく、人は人についていく。
法治主義ではなく、専制主義でも、民主主義でもなくて、中心にあってぶれる事の無い大黒柱。皇帝というものは、それになりえる存在なのだ。
否。
そうでなければならぬ。
皇太子殿下という見本が人々にそれを知らしめた。
「そなたもそう思うであろう」
艦橋の片隅で、フェザーンを見下ろすように立ち竦んでいたアドリアナ・ルビンスカヤに問うて見た。しばらく身動ぎもしなかったが、氷が溶け出すように振り返る。
その目は冷たく、冷笑を湛えていた。
「残念ながらそうは思わない。確かに皇太子殿下にはカリスマ性がある。ルドルフ大帝やアーレ・ハイネセンのように。しかしそのような者は極々少数だ。誰もが持っている訳ではない。そのような者を中心に据えるほど、あの皇太子は甘くない。だからこそ自分の後を今から考えている」
自分の後か……。
確かにその通りだろう。私は艦橋の端に立っているラインハルトに目を向けた。そしてジークにも思いを馳せる。あの二人を鍛えているのは自分の後を継ぐ者を育てるためだ。
そしてラインハルトも自分の後を育てねばならぬ。やはり教育よの。
■自由惑星同盟 ハイネセン ウルリッヒ・ケスラー■
長い航路を終え、ハイネセンに降り立った。
やはり空気が違う。
オーディンともフェザーンとも違う空気。政府の歓迎より記者のフラッシュより、なによりもこの空気そのものが、この星が自由惑星同盟の中央なのだと感じさせた。
物々しい警護を引きつれ、ブラウンシュヴァイク公爵とラインハルトは明日の協議のために一旦、ホテルに向かった。私と事務官達は本会議を前にして、事前協議をさっそく行うために、会場に向かう事になっている。
最高評議会ビルの前には、大勢の人間が集まっていた。
デモの一種
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