第2騎 転生
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「分かりました。それでは、準備がありますので・・・」
そのまま、振り返り、私の方に向かってくる。そして、私の横を通る時に、囁いた。
「邪魔をするなよ。」
そう言って、彼は退出した。・・・邪魔と言っても、どうせ、初陣では大きな部隊は任されない。故に、出来ることも少ない。しかし、考えなくてはいけない。私は、三男として一生を暮らす気はない。“成すべき事”があるのだ、私には。
「エル様、なかなか、罪な男ですな。」
それまで黙っていたヴァデンスが、茶化してくる。何が、罪な男だ。ただ、あの人が“子供”なだけだ。弟に対抗心を抱くなんて。
「エル、ヒュセルとよく話し合い、出陣に備えよ。」
父上が、私に声を掛ける。
「はい。それでは、私も失礼致します。」
一礼をしてから、父上とヴァデンスに背を向けて歩き出した。
「あぁ、エル・・・。」
声を掛けられて、振り返る。私は、驚いた。そこには、先ほどまでの“人の良さそうな顔”ではなく、“王”の顔をしている父上がいた。私が、これまでに見てきた強国の“王”だ。
「私は・・・力ある者であれば、王位は長男でなくとも、与えてよいと考えている。」
力のある言葉が、私に浸透していく。それは、少しずつ身体を巡り、やがて頭へと辿り着く。・・・気づいていたのか、この人は。私の目が、少しずつ細くなる。相手を見定めるかのように、その心の内を覗こうとするように。私が声を発しようとした時、先に向こうが声を発した。
「冗談じゃ、そんなに怖い顔をするでない。折角のいい男が、台無しじゃぞ。」
そう言って、また大声で笑い出した。先ほどまでの“王”の威はない。いつもの“人の良い顔”に戻っていた。父上の隣にいるヴァデンスも笑っている。
「すまんな、呼び止めて。もう、行ってよいぞ。」
私は、一礼をして部屋から退出した。・・・気のせいではない。恐らく、あれが父上の“王としての顔”なのだ・・・アトゥス王国国王としての。私は、侮っていた・・・いかんな、どんな人間も甘く見てはいけない。甘く見れば、自分が痛い目を見る。それが、“王”の生きる世界なのだ。相手を騙し、謀り、操り、躍らせ、殺す世界だ。・・・気を引き締め直さなくては。成すべき事を、成せなければ、ここに帰ってきた意味がない。
私は、謁見の間を出た後、この建物の一番高い所に来ていた。教会の鐘がある塔の最頂部分だ。ここは、景色が良く見え、かつ、鐘を打つ時以外、誰も来ない。だから、私はここでよく考え事をする。誰にも邪魔されずに、考える事が出来るから。
―エル・シュトラディール・・・私の“今”の名前だ。歳は13になる。アトゥス王国第21代国王 ジンセルス・シュトラディールの三男で、王位継承権第3位の王子。しかし、本当の私は、アトゥス王国第8代国王 ルミウス
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